引き続き娑婆のありがたみを噛みしめながら
みなさまこんにちは。
先週もお伝えした通り、娑婆に出たての雨オーナーこと斎藤雨梟です。そろそろ「出たて」でもなくなってきましたが、ちょっとずつできることを増やしつつ、まだ娑婆と健康のありがたみを忘れずに過ごしています。
さて今日も先週のお話と関係なくもないことを書きたいと思います。
と、病院関連お役立ち情報パート2かと思わせておいて、まさかのネイルの話パート2です。
英雄の爪
さて先週も書きましたが、私は爪が異様に弱いので、ここ数年補強のため常時ジェルネイルをしておりました。
だいたい1ヶ月くらい維持できるものなので、毎月「今度はどんなネイルにしようか」などと考えるのも楽しいものです。そんなこんなである時、雑誌のネイル情報などをパラパラ見ていたところ、「ジェルネイルはもともとアメリカでビジネスとして確立され、当初はスポーツ選手の爪の補強に使われていた」という記事を見つけたのです。
その時、私の中の積年のモヤモヤとその情報とが一気に繋がりました。
積年も積年、時は90年代、野球選手の野茂英雄さんがアメリカのメジャーリーグで大活躍して話題になった頃まで遡ります。野茂選手が「割れてしまった爪をマニキュアで補強して投げ続けた」というエピソードが有名になりました。井上陽水の「英雄(えいゆう)」という歌にも歌われています。
当時ももちろん私は爪が非常に弱く、折れてしまった爪を補強する方法をあれこれ試していました。絆創膏、液体絆創膏、テープ、瞬間接着剤、そしてもちろんマニキュアなどなど。どれも強度に問題があるか、自爪との間の定着に問題があるかで、一度割れてしまった爪の画期的な補強方法はなかなかなかったのです。そこへ「マニキュアで補強して投球」のニュースです。そんなの嘘だろう、と思いました。マニキュアの皮膜はたとえ10回以上塗り重ねてもそれほど強いものではありません。自爪への定着度は意外と強く、瞬間接着剤と同等か、ものによってはそれ以上ありますが、折り曲げる方向の力にも引っ張られる方向の力にもかなり弱く、日常生活レベルですぐに破れてしまう程度です。ましてやスポーツ、しかもあの野球のボールを力を込めて握って投げるなど、あり得ない!と思ったのですが、だからなんだというわけでもなく、そんなことはすっかり忘れていました。
ここで先述の雑誌の記事を読んだところに戻ります。
野茂選手が爪の補強に使っていたのは、当時の日本で通りがよくわかりやすいように「マニキュア」と表現したものの、実際は「ジェル」だったのではないだろうか?と思いました。
そこで前回のMRIの時にもお世話になったネイリストさんに「プロ野球の投手がマニキュアで補強して投げるって無理じゃないですか?あれはジェルだったのではないかという気がするんですが、どう思いますか?」と聞いてみました。
「確かに普通のマニキュアの強度では無理ですね。確かなことは言えませんが年代的に考えて、ジェルではなくアクリルではないでしょうか」というのがネイリストさんのお答。
「アクリル」は「アクリルスカルプチュア」とも言われる人工爪の一種で、ジェルより早く普及していたものらしいです。ジェルよりも強度があり、自爪が短い人もアクリルで長さを出したりできるのですが、ジェルの方が加工や硬化のプロセスが簡単で薬液で落としやすいことなどの理由で、今では人工爪の主役の座をジェルに明け渡してしまったようです。
もちろん、野茂選手が実際に何で爪を補強したのかはわかりませんが(インターネットで検索した限りでは確かな情報は見つかりませんでした)、さすが専門家、と思ったことでした。
爪の戦いの歴史は続く
野茂選手の爪の真相はわかりませんが、気軽に自分で塗れてしかも爪を補強できるマニキュアが実在するとしたら、さすがネイル先進国アメリカ!と感心するしかないというか、それを日本でも売って欲しいものです。ネイル先進国と言っても、「爪を染料で染める」などの文化は太古から世界の各地域にあります。ただ、アクリルやジェルなどの補強や造形を伴う技術はアメリカで普及し、日本に入ってきたようです。
ジェルネイルの歴史についても検索してみたのですが、最初に発明したのは南アフリカの研究者だが一般に普及させたのはアメリカだという情報が何箇所かで見られました。ですが詳しいことはわからず出典も不明。書籍を検索しても参考になりそうな文献は見当たらず、「ネイリスト検定」の教科書あたりが有望かというところですが、中を見たわけではないのでジェルネイルの歴史についてどれだけ書いてあるものかわかりません。今度調べてみようと思います。私がいきなり「ネイリストになる」などと言い出したら、何があったか察してください。
考えてみれば爪の補強というのは、爪が弱い人にとっては「義肢」「入れ歯」などの「機械の体(?)」や「再生医療」レベルに重要なことです。爪がなくては指先にまったく力が入りません。例えば天才的な野球の才能があったとしても、爪がボロボロではその才能を生かせず終わるでしょう。ジェルネイルというのは爪の弱い天才投手(だけでなく爪の弱い色々な人)には大きな福音ではないでしょうか。学生の運動部には色々なしきたりがあってジェルネイルなんてしていようものならひどく怒られそうというイメージもありますが、虫歯の治療やメガネがいいなら爪の補強くらいしていいじゃないかと思います。野茂選手も(何かしら)やってたんだし。
ちなみに私は現在まだジェルネイルにしていませんが、爪が丈夫になって二枚爪になりにくくなるという怪しげな触れ込みのマニキュアを見つけました。プロテインやパントテン酸カルシウムが入っているとのこと。どちらも口から摂取して体内で吸収されて役に立つものと聞きますし、爪というのは死んでしまった細胞で、何を塗るにせよ肌に薬を塗るような効果の出方は望めません。仮に塗って即座に爪が丈夫になるというのなら、爪の中まで何かの成分が浸透するということで、それはそれで怖くないか?などなど頭は「?」でいっぱいですが、物は試しと使ってみることにしました。
今のところ、爪を補強するマニキュアとしては良い仕事をする製品です。細かな繊維が入っていて補強効果のあるマニキュアというものがあるのですが、あの種のものと同様くらいの威力はあるようです。が、まだ爪が丈夫になったという効果は感じません。引き続き経過を観察したいと思います。
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