猫の肛門腺破裂とは?
うちにムギライオンが現われた。すごくかわいい! でも残念ながらこれはファッションではない。傷口をなめないためのエリザベスカラーだ。
エリザベスカラーといえば下の写真のようなものだとぼくは思っていたし、世間的にもそうだと思うけれど、こんなかわいいドーナツみたいなのもあるのを最近知った。
ムギがどうしてしまったのかというと肛門腺破裂だ。
肛門腺とはおしりにある臭いを出すための器官である。スカンクやいたちが有名だが犬や猫にもあり、なわばりを主張したり、お互いを識別するのに使っているらしい。
通常は肛門腺内の分泌物がうんちをしたときなどに少しずつ出る。ところがこれがうまく出ないで貯まってしまうことがある。貯まりすぎたものが破けて出てしまうのが肛門腺破裂だ。肛門腺破裂なんて聞いただけでも痛そうだ(泣)。
獣医さんに行って、傷口を消毒し、抗生剤を注射してもらった。もちろんムギは「ふぎゃーっ!」と怒っていた。ごめん、ごめん、がまんしておくれ。
猫は怪我をなめて治そうとする性質があるが、ザラザラの舌でなめるとかさぶたができかかってはとれてかえって治らないことがある。そこでムギは、なめないために2週間エリザベスカラーを命じられたのである。
肛門腺破裂は5年ほど前にも一度やったことがあった。たしか食欲がなくなりトイレにも行かなくなり、へんだと思って病院に連れて行ったら肛門腺破裂だったのだ。そんなものがあるのをそのとき知った。
猫にやさしいエリザベスカラー
5年前と同じ昔ながらのエリザベスカラーを出してきて、ムギに着用させた。しかしこれがとても不自由そうだった。重くて硬い。大きい。大きいからテーブルの足などにぶつかる。硬いからその衝撃も大きい。かわいそうな感じだった。
トイレに入るのも難しいし、いちばん危なっかしいのは階段だ。ステップにカラーの下部がひっかかる。落ちたらどうしようと心配になる。
5年前は今より体力があったから何とかなったのかもしれない。
これはどうにかしなければと思い、もっと猫の負担が少ないエリザベスカラーはないものかとネットで探してみて、いまは大きさ・素材・デザイン、いろいろなカラーがあることを知った。
そして通販で買ってみたのがこれだ。
ムギにつけさせてみたら従来のカラーとは全然違った。軽い・小さい・柔らかいで猫の不快感はうんと軽減されている。
パワフルな猫だと自分で取ってしまったり、つけたままでも強引におしりをなめてしまったりする恐れがなきにしもあらずだが、ムギは大丈夫だった。
傷口の状態も5年前よりマシだったのかもしれない。あのときはすごくおしりを気にしてスキがあればなめようとしていたが、今回はあまりなめようとする様子がうかがわれなかった。
新しいエリザベスカラーでも階段の上り下りやトイレの出入りには最初苦労していたが、数日でこつをつかみ、上手にできるようになった。まだ適応能力があるなあと嬉しくなった。
2週間と言われたけれど10日で治っているようだったので獣医さんに連れて行くと、完治していて、カラーを外す許しが出た。
傷が治るのも遅くないぞとまた嬉しくなったが、、、1ヶ月ほどで再発してしまった。また貯まって破れてしまったのだ……。
もう少し注意しておくべきだった。肛門腺破裂の再発はわりとあることのようだ。5年前のときも再発防止のため、しばらく定期的に肛門腺しぼりに通っていた。破裂するほど貯まる前に先生がぎゅっとつまんで出してしまうのだ。しかし数度しぼってもらった結果、あまり貯まっていない、つまり自然と出ていることがわかって終了となった。その後5年間は問題なかった。
肛門腺しぼりは必ず行なわなければいけないものではない。猫は犬とくらべて肛門腺がつまることは少ないそうだ。つまって貯まりやすい子はやった方がいいが、自然に出て貯まらない子はまったく必要ない。痛い思いをさせるだけだからやらない方がいい。
若いころ貯まらなくても高齢になると貯まりやすくなる猫もいて、それはおしりの筋肉が衰えてくるからと聞いた。排便のためふんばったときその力で肛門腺の分泌液も出るからだ。たしかにムギはおしりも太もももたよりないから、貯まりやすい素地はあるわけだ。
動物病院に行き、また同じ治療を受けた。傷口をきれいにして化膿を防ぐため抗生剤の注射。そして2週間のエリザベスカラー生活。
おしりの傷は一度目より軽く見えたが、治るのには一度目よりかかり、ちょうど2週間だった。
かわいいムギライオンも見納め。記念撮影。

やわらかエリザベスカラーは寝る姿勢でもほとんど邪魔にならない。

首まわりはタートルネックみたい
今後も注意して、怪しかったら早めに病院で肛門腺しぼりをしてもらおう。
(by 風木一人)