デザイン会社K2 長友啓典社長 第4回

今月の社長インタビューはアートディレクター長友啓典さんをお迎えしています。第4回は「ひと」について。長友さんは、ご自分にとって「酒場とゴルフ場は同じだ」とおっしゃいます。さて、どういうことなのでしょう?


話のキャッチボール
長友啓典社長(撮影 中野義樹)

長友啓典社長(撮影 中野義樹)

広告や出版以外にも、イベント・映像・音楽などK2のお仕事は幅広いですね?

「みんなデザインに返ってくるから、すべての中にデザインがあるからです。
社長のぼくがいろんな分野の人とつきあって、社員にもどんどん紹介するから広がっていく。でも別に仕事のためじゃなくて、人とのやりとりが好きなんですよ。

がんの手術してから、歩かないかんということもあって、よくゴルフに行くようになりました。ゴルフ好きなんやけど、ほんとは回りながら話すのが楽しい。

手術前はお酒でした。酒場が好きやった。お酒が好きなんじゃなくて、酒場が好きやったんです。

酒場にはいろんな人が来ていろんな情報が交錯しているから面白いんですよ。
話のキャッチボールができる。「最近どうですか?」とか一言二言だけでも全然違う。
会って、目を見て話すこと、大事ですよ」

酒場とゴルフ場は長友さんにとっては同じなんですね?

「そうそう(笑)。もともと人が好きなの。
桑沢デザイン研究所の学生時代、一日一人に会うと決めて、いろんな分野の人訪ねていってたことがあります。
学生ゆうたら会ってくれるんですよ、けっこう。テレビ局のディレクターとか。デザインやってますって言うと、へえどんなデザイン?とか言ってくれて。あの番組面白いですねって言ったけど、どこが面白い?って訊かれたら答えられなかったりして(笑)。
十人に一人は「じゃあ飲みにいこう」って連れてってくれたり、面白かったですね。

そう、作家の開高健さんが高校の先輩で、訪ねていったことがあるんです。そしたら、俺なんか頼ってくるなって怒られた(笑)」

長友啓典社長。桑沢デザイン研究所のころ

桑沢デザイン研究所のころ(中央)

大学、専門学校、イラストスクール等で先生もされています。教える現場と仕事の現場では人との接し方が違いますか?

「ううん、同じやと思う。教えるゆうんじゃなくて、ぼくが若い方たちから情報をもらってる感じですよ。
ぼくは経験を話すだけなんやけど、ポカンとしてる話題とぐっと聞きこんでくる話題とあるでしょう? それで、ああ、今の人こうなんだとわかってくる。
アナログのこと話すとものすごい興味持ってくれるんです。知らないだけに。そういうことが凄く面白い」

長友さんの目は、子どものような好奇心で、いつも面白いものを探しているようです。次回はいよいよ最終回、お仕事を離れ子ども時代のことをうかがいます。お楽しみに!

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長友 啓典(ながとも けいすけ) アートディレクター
1939年大阪生まれ。61年 桑澤デザイン研究所卒業。同年、日本デザインセンター入社。69年 黒田征太郎とK2設立。講談社出版文化賞【ブックデザイン賞】など各種賞を受賞。2014年絵本「青のない国」(小さい書房)を風木一人氏、松昭教氏共著で出版するなどエディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、雑誌にエッセイを連載など幅広く活動し現在に至る。
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