デザイン会社K2 長友啓典社長 第2回

今月のインタビューはアートディレクター長友啓典さんです。若くして国内外で受賞、50年にわたり日本のデザイン界をリードしてきた長友さんは、デザイン会社K2の社長でもあります。クリエイターであると同時に社長であるとはどういうことか。5回連続でお送りします。


「デザインは職人の世界」
長友啓典社長(撮影 中野義樹)

長友啓典社長(撮影 中野義樹)

K2のお仕事、デザインについて教えてください

「デザインってのは職人の世界なんですよ。ぼくらの若いころは自分の手で線引いて、文字作って、色作ってたんです。バケツでかき混ぜて。だから時間かかります。まわり道もたくさんする。でもその間にいろんなこと覚えてったんですね。

今コンピューターでしょう。どっか押したらすっとできちゃう。その便利さが人を育てないと思う。
便利なもの使ってもいいんですよ。でもみんな同じの使ってたらそりゃ個性なくなるでしょ?
コンピューターで全部できると思っちゃダメ。コンピューターがやらない、コンピューターができない隙間を手でほじくっていかなきゃ。

お米作るんだって一年かかるわけだし、ぽんとボタン押したら花が咲くなんてことありませんよね。
時間がかかること、いっぱい失敗することの意味を知ってもらいたい。それが身体で覚える、職人の世界だってことです」

「うちでは2、3年たってだいたい流れがわかったら、どんどん任せて仕事させます。そりゃ失敗もあるけれど、目えつぶって。そうして覚えていかないと、なかなかぼくらの仕事はね。
雑誌なら、編集の人の注文をどんだけ理解して、どんだけ返せるか。全然思惑違いのこと返して、言ってもらえればまだいい、何も言わず次から仕事来ないのが一番怖いわけでしょ?

うちにいる間にいっぱい失敗して腕を上げてほしい。
そうすると外に出たとき、ぱあっと広がるんです」

K2から独立して活躍されている方はとても多いですね。

「そうなんです。定年制があるわけじゃないけれど、だいたい10年くらいで独立していきますね。ずいぶんたってからも「いまこんなんやってます」って挨拶にきてくれたりする。とても嬉しいです」

デザイナーはもちろん、イラストレーター、絵本作家など多様な人材を輩出するK2、その秘密は「いっぱい失敗すること」。何とも考えさせられます。
次回は「社長にとって一番大事なことは何か」をうかがいます。お楽しみに!

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長友 啓典(ながとも けいすけ) アートディレクター
1939年大阪生まれ。61年 桑澤デザイン研究所卒業。同年、日本デザインセンター入社。69年 黒田征太郎とK2設立。講談社出版文化賞【ブックデザイン賞】など各種賞を受賞。2014年絵本「青のない国」(小さい書房)を風木一人氏、松昭教氏共著で出版するなどエディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、雑誌にエッセイを連載など幅広く活動し現在に至る。
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