ファーストラウンジ、今月の社長インタビューはアートディレクター長友啓典さんをお迎えしています。第3回は「社長」という仕事について。六本木のK2事務所でお話をうかがいました。
「社長に一番大事なこと」
社長の仕事とはどんなものだと思われますか?
「社長だからこうせなとか、あまり考えたことないんですけどね。
デザイン会社だから、コピーライター、イラストレーター、写真家、そういうクリエイターと仕事しますね。そのギャラを決めるのは社長の仕事です。
そう、写真家の十文字美信さんが篠山紀信さんの事務所から独立したとき、最初の仕事をお願いしたことがありました。いくら払ったかもう忘れちゃったけど、ワンショットでたぶんアシスタントの数ヶ月分くらいだったんじゃないかな。
後に十文字さんがエッセイで、あのとき「これで独り立ちできる」と思ってどれだけ嬉しかったか、書いてくれたことがあって。
嬉しかったですよ。クリエイターにふさわしいギャラをお支払いして、喜んでもらうこと。アートディレクターの、社長の喜びと言ってもいいかなあ」
社長にとって一番大事なことは何でしょう?
「人を大事にする。それしかないんちゃうかな。
ぼくらがこの世界入ったころ、電通に吉田秀雄さんって有名な社長さんがいらして。
毎日同じネクタイしてた新入社員に、吉田さんが新しいネクタイをプレゼントしたって話を聞いて、凄いなあと思ったのを覚えてます。社長さんの目配りというもの。大きな会社でもちゃんと一人ひとりを見てるってこと。
プライベートな話なんですけど、がんで入院したとき、病院が生花を受けつけないとこだったんですね。そしたらサントリーから会長の佐治さんのお名前で、自宅の方に、奥様宛てで、お花とお見舞金を届けてくださった。
感動しましたね。この会社凄いな、と。佐治さんが直接ご存知なわけじゃないと思うけれど、そこは秘書室とかね、しっかりした代々伝わるやり方があるんでしょう。
一介のクリエイターですよ。何百人出入りしてると思う、その一人が入院しただけですよ?
社員ばかりか出入りの業者まで大事にする。だから全国たくさんの酒屋さんとの絆ができてるんでしょう。
社長の気配り、が社風になり、社の品格になっていく。大事なことだと思いますね」
――――長友啓典社長インタビュー、次回は23日(月)更新です。お楽しみに!
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長友 啓典(ながとも けいすけ) アートディレクター
1939年大阪生まれ。61年 桑澤デザイン研究所卒業。同年、日本デザインセンター入社。69年 黒田征太郎とK2設立。講談社出版文化賞【ブックデザイン賞】など各種賞を受賞。2014年絵本「青のない国」(小さい書房)を風木一人氏、松昭教氏共著で出版するなどエディトリアル、各種広告、企業CI、及びイベント会場構成のアートディレクションを手がけるほか、多数の小説に挿絵、雑誌にエッセイを連載など幅広く活動し現在に至る。
デザイン会社K2