アスク・ホールディングス　山本明美社長第2回

ピンときたら即行動に移す。自分の直感を信じて動く。迷ったときはやらない。必要に迫られるとその分野を勉強する。
まず自分がやってみるのは、創業のころから現在までずっと同じスタイルです。毎日ワクワクして楽しくて仕方なかったです。

このころの一番印象深かった仕事に、地元の高速道路の夜間通行止め告知計画があります。
この業界は、デザインとは無縁の世界でしたから、いろいろと提案することが山積みでした。バスやタクシー協会等の各交通機関、そしてもちろん道路上にさまざまな告知物が必要でした。ＶＩからポスター、各種看板、横断幕等、加えてテレビ・ラジオ放送もありましたから。足掛け2年、受注額は数億を超える大仕事でした。

1994年、南青山に東京事務所を開いて都内での活動も始めました。地図を広げるとたくさんの企業が集中しているので、勝手にこれはチャンスだと思いました。昔から超ポジティブ思考なんです。

隣ビルの大手生命保険会社のパンフレット制作を受注するなど、少しづつ実績を積んでいるうちに、同社のオフィシャルホームページ制作（保険料計算システム含む）の入札コンペの声がかかりました。大手広告代理店を含む7社競合です。
ひと月の準備期間でしたが、必死で企画とデザインを考え、この企業のテーマをシンプルな線だけのイラストで表現したインパクトある企画書と、数千万の見積もりを持ってプレゼンに挑みました。

この日のことは今でも鮮明に覚えています。
ホンダのショールームの前を歩いているときに携帯が鳴り、「審査員全員一致で御社に決定致しました！」
あまりの嬉しさに大泣きしました。
事務所に帰り、ダルマのイラストの片方に目を入れて「やりました！みんなのおかげです。ありがとう ！！」と福岡にいるスタッフにFAXを送りました。
デザイナー、プランナー、SEスタッフ全員が知恵を結集し勝ち取った最初の仕事でした。

アスクの制作物の一部（１）

昔から新しいことを考えたりするのが好きだったんです。特にニッチな、誰も手をつけてない分野を開拓するのが面白い。
ＩＲ（インベスター・リレーションズ）の仕事もそうでした。ＩＲは企業が株主や投資家に向けて正しい各種情報を発信していくことなんですが、当時は事務的な無味乾燥なものしかなかったんです。

参入のきっかけは、たまたま新聞記事で当社のことを知った某総合研究所から声がかかったことでした。ＩＲ支援営業の差別化のため、提携するデザイン会社を探していたんですね。
何も知識がなかったので、ＩＲのことをもっと勉強しようとＩＲ協議会に入ったんですが、デザイン会社はうちだけでした。単に情報を伝えるだけで、「わかりやすく きれいに」が抜けていたわけです。

我々は企業のファンを増やすために、株主モニター制度の導入やアンケート等のさまざまな仕掛けも考え実施しました。
競合が少なく、うちにはいい仕事でしたね。上場企業の月次報告書や会社案内、短信レポート等の企画制作を任せてもらいました。一度関係ができるとずっと続くのもいい点でした。

このころに業績はぐーんと伸びました。労働集約的な仕事からクリエイティブな企画デザインにシフトして、会社としてはまさに繁盛期でした」