第115話 K先生の2時間

最近、八ちゃんは学校の宿題をやりません。
iPadで遊んでばかりいます。
というと
烈火のごとく怒り、その後は
八ちゃんはルービックキューブを2分くらいでそろえられます。
そろえては崩し、そろえては崩し、ひたすら不毛な時間が流れます。
iPadではゲームばかりやっているというわけではなく、ユーチューブで数学や物理の動画を見ていることも多いので、宿題をやらなくても勉強は好きそうだからいいのかな?と思ったり…
昭和世代の教育が染み付いている私には、親が勝手に子どもに宿題をやらなくて良いと言うのは憚られます。
こんな悩みを、先日、担任のK先生に相談しました。
するとK先生は三者面談をしてくださいました。
それは、このようなメニューでした。
1 最近の八ちゃん 八ちゃんより
2 最近の八ちゃん お母さんより
3 最近の八ちゃん 先生より
4 今日の感想 八ちゃんより
5 まとめ
八ちゃんは、最初はもじもじしていましたが、先生が「なるほど!」「分かる」「良いね」など相槌を打って共感してくれるので、だんだん喋るようになりました。
私も先生も、最近の八ちゃんについて思うことを話し、再び八ちゃんの感想を聞き、今日のまとめをした結果、宿題は、みんなと同じ内容ではなく、八ちゃんだけ特別、興味が持てそうな、算数の難問を出してもらうことになりました。
いつに間にか外は真っ暗で、面談を始めてから2時間も経ったのだなぁ…と思ったその時!
八ちゃんときたら……
あまりに失礼だと思い、注意しました。
先生の大切な2時間を、八ちゃんのためだけに使ってもらったことは、とてもありがたいということを言い聞かせました。
すると先生は
と、言われました。
私は、八ちゃんが大人になっても忘れてしまわないように、漫画にしようと思いました。

(津川聡子 作)


*編集後記*   by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟

津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第115話 K先生の2時間」いかがでしたでしょうか。

つまらない時間が許せない、八ちゃんの怒りぶりときたら!(今日のみどころその1)
K先生の2時間のおすそ分け、私もありがたくいただきました。
いつか過ごしたあの時間のとんでもない貴重さに気づく、みたいな瞬間って、歳を重ねると増えてきますが、大人の時間の進みが速いのは、そういう貴重な荷物をたくさん持っているからじゃないのかなあ(我ながらどういう理屈? と思いますがあくまでもふんわりと、感覚で!)まだまだ身軽な八ちゃん、縦横無尽に走り回って、いつか誰かにあげられる何かを両手にいっぱい持つことでしょう♪ K先生もそう信じてくれているのです。楽しみですね!

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