第194話 さらば!やせ我慢

二十年ほど前に、フランス製の古い椅子を買いました。

座面のバネが飛び出ていて、座り心地の悪さが一目で分かるほどでしたが、アンティークな雰囲気が気に入って、買ってしまいました。

値段は3万円でした。

当時の私にとって、かなり無理をした値段でした。

座り心地の悪い椅子を頑張って買った私は……

……二十年間、自分にそう言い聞かせながら愛用していました。

♪    ♪    ♪

ところで話は変わりますが、バイト先の近所に、気になるお店があります。ペルシャ絨毯専門店です。いつもは素通りするのですが、先日、何となく入った勢いで、ギャッベという羊毛の小さなマットを買いました。

帰宅後、あの椅子に敷いてみました。

(作 津川聡子 ・ 写真 てる君)


*編集後記*   by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟

津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第194話 さらば!やせ我慢」いかがでしたでしょうか。素敵な椅子が、ギャッベという相棒を得て座り心地が良くなるタイミングを待っていたかのような不思議な帳尻の合い方です。椅子だけに。最後の一コマの表情ときたら! タイムマシーンで過去に行けたらサトコさんは「その椅子、座り心地が悪くてしばらく我慢を強いられるけれどやっぱり買うべきだよ」とアドバイスして過去の自分を煙に巻くのでは? と思わず楽しく妄想してしまいました。みなさまなら椅子を買う昔のサトコさんに何と声をかけますか?

「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪

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