号外「イギリスのEUからの離脱(Brexit)について1」

先週6月23日にイギリスがEUを離脱するか否かの国民投票が実施されました。
結果は皆様もご存じの通り、国民はEUから離脱することを選びました。

この Brexit について、現地に住んでいる日本人として、見聞きしたことと併せて、私見をまとめてみたいと思います。

英国EU離脱を報じる新聞

私はこちらに来た当初、イギリスはEUをうまく利用しているのだと思っていました。
EUに参加することで、その経済圏内でのビジネスを拡大でき、また(日本と同様に本来なら問題になるはずの)少子高齢化を移民という形で解消する一方、独自通貨を使い続ける強かさも兼ね備えていると表面的には見えていたからです。

実際、イギリスは経済的には急激な発展こそ望めないかもしれませんが、GDPも2%程度の伸びは見せており、日本より数段ましな状況だったと言えます。

そんな状況なので、私はイギリスがEUから離脱するなんて本気では考えていないだろうと思っていました。
しかし現実は私の予想に反し、離脱ということになりました。

その大きな理由は、なんといっても移民の問題です。

2000年以降、加入した東欧諸国(ポーランドやルーマニア等)はイギリスやドイツなどに比べ貧しい国でした。そんな貧しい国々から、富と安定した生活をもとめ、移民としてイギリスに押しかけてきます。
そうすると、イギリス政府としてはEUの制度上、移民である彼らもイギリス国民同様に保護する必要があり、たとえばNHSという国の機関が管理する病院であれば、移民であっても無料で利用できるようになってしまいます(ちなみに私のような留学生でも、VISA申請時に一定額を支払えば無料で利用できます)。

結果、病院に多くの移民者がおしかけ、キャパオーバーを起こしてしまうというわけです。

たとえば、私の友人から聞いた話によると、現在のイギリスで病院に行こうとすると、コンサートのチケットを取るような状況になるようです。朝8時から何度となく電話をし、30分以上つながらない事態が続いた揚句に、翌日以降に回されるケースが多発するそうです。

また特に悪質なケースだと、わざわざ出産間近の妊婦が母国を離れ(自国の病院だと費用がかかるので)、イギリスに出産しに来るそうです。
子供はイギリス国籍を取得でき、出産後には政府からいくらかの費用補助もあるようなので、それももらって自国に戻ります。

学校もイギリス人にストレスを与えている大きな要因のようです。

病院と同じく学校も(公立校は)無料なので、移民の子も容易に学校で教育を受けられます。結果、クラスの人数は大きく増えた上、移民の子供の中には英語がちゃんと話せない人も多いので、イギリス人の親が自分たちの子供に求める教育レベルが維持できなくなってしまっているようです。これは極端なケースでしょうが、昔は例えば10人のうち1人が移民の子供だったのが、今は10人のうち1人がイギリス人の子供の学校もあったりするそうです。

一方で、これらの問題がイギリスのどのレベルの人たちの中で起こっているかを考える必要もあります。
イギリスは階級社会の名残が色濃く残っている社会です。政治家を含めた上流階級の人々は、EUとの取引を主としたインターナショナルなビジネスで稼ぎ、病院も学校も無料の公立のものではなく、超高額のプライベートのものを使うため(多くの首相を輩出したイートン校なんかはその典型です)、実生活が移民に煩わされることもないわけです。結果彼らはEUから離脱する理由がない、といったことになります。
ロンドン周辺が最終的に離脱に反対することになったのも、このいわゆる上流階級の人たちの票が影響しているんだと思います。

皆、自分の階級はどうあれ、移民がもたらす問題は頭では理解できているんだと思います。しかし、その問題からの距離により、実際に変化を求めるほどのエネルギーを持つかどうかの差に表れたということでしょう。

――――長くなるので、明日更新の後半に続きます。