足利直義:「昔のエライ人が『集中力のないヤツは座禅をしたって仕方ない』と言っている。だからそこら辺のアホウを壁に向かって座らせたところで何の意味もないのだ」・・・とか言っている人がいるのですが、これはどうなんでしょうかね?
夢窓国師:なんとまぁ、身も蓋もないことを言うヤツがおるもんじゃな・・・
昔の人がそう言ったのは、禅の修行を「座ってさえいれば悟れる」ものとカンチガイしてしまって、師匠や先輩たちの話を聞こうともしないで引き籠っているような人を指導するためじゃ。
「アホが座禅してもムダ!」と決めつけているわけではないのじゃ。
座禅をうまくやる自信がないからといって、何も考えずに日々をおくることこそ人生をムダにしていると思うぞ、ワシは。
仏教における修行は一朝一夕で成るようなものではない。一生かけても終わらないこともあるぐらいのつもりで取り組むべきものなのじゃ。
この世において才気煥発で悟りの早い人がおるとしたならば、必ずやそいつは前世においてアホでもめげずに座禅の努力をしたことがあるハズ。
たとえこの世では集中力に欠けたアホウだったとしても、それでも頑張って座禅を続けたならば、来世ではひと言聞いただけで数千のアイデアが浮かぶ頭脳の持ち主となれるハズじゃ。
世間には「座禅は頭を使うので難しくてアホにはできない。アホには頭をあまり使わずにやれるお経の音読とかが向いている」などと言うヤツもおるが、そもそも心構えが間違っていたならば何をしたところで徒労に終わる。
逆に心構えがしっかりしておれば、頭を使う、使わないにかかわらず何をやってもちゃんと結果が出せるハズ。
要は心構えの問題なのじゃ。
「座禅は難しい」などと考えるヤツは、まるで座禅のことがわかっておらんのじゃ!
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