別訳【夢中問答集】第二十七問 智慧とは、ただの道具である 2/3話

「変わらぬものなど何もない」ということを心底理解し、「結果」と「原因」の関係を正しく把握し、世間並みの富や名誉を追うことをやめることができる、というのであれば、なるほど、「そこら辺のアホウよりは智慧がある」と言えるかも知れん。

しかしそれだけでは、「真に立派な人となる」という究極の修行目標は達成できない。

菩薩修行にチャレンジするための基礎トレーニングである「三賢(さんげん)」や、先ほど説明した「十地」の菩薩修行を達成して「十聖」となったとしても、まだまだ足りない。

「一切の智慧やアホさ加減は実は同じものである」ということを身にしみて理解し、「結局のところ全ては実体をもたない幻のようなものである」ということに確信を得て、「もはや何も発生しないし、消滅もしない」ということを行動で示せるようになってもまだ足りない。

「一切の智慧やアホさ加減は実は同じものである」ということを身にしみて理解した時、これまで無くそうと、また獲得しようと努力してきたもののどちらもが、本来不要なものであったことを知り、それらを同時に振り捨てる。

この境地を、「まるでダイヤモンドのように強固に安定した状態」という意味で「金剛喩定(こんごうゆじょう)」と呼び、この時になって初めて、「妙覚」と呼ばれる本当の智慧が現れるのじゃ。

そして、先程から何回も言っているように、この「本当の智慧」というヤツは、皆、誰しもが生まれつき欠けるところなく持っているものなのじゃ。

であるからして、「本当に才能のある人は、細かい修行の段階を全て飛び越して、いきなり究極の智慧とは何であるかを知る」ことができる。

ワシの先輩がよく、「仏の智慧までひとっ飛び!」などと言っていたのは、つまりこのことじゃな。


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