今どきの修行者に大乗仏教について語らせてみると、結局この四つの考え方を出られていないことが多い。
まぁ、当の仏さまもこの四つの考え方で整理可能な言葉や動作を使って教えたわけなのじゃが、もちろん仏法の真実の境地はそんなところにはない。
全ては「ある」という思い込みを打ち破るために「ない」と言い、全ては「ない」という思い込みを打ち破るために「ある」と説明する。
そしてそれらが「思い込みを打ち破る」ための方便だということに気づかない連中は、それぞれ言われたことをそのまま真実だと思い込んでしまうというわけじゃ。
二乗というのは「声聞(しょうもん:仏の教えを聞いて悟る)」・「縁覚(えんがく:自力で悟る)」と呼ばれる修行方法なのじゃが、要するに「鬱陶しい煩悩(生物的な欲求)を全て断ち切れば二度とこんな面倒くさい世界に生まれてこないで済む」と考えているわけなのであって、大乗仏教とは似ても似つかないものじゃ。
本当に夢幻法門をマスターした人は、このような考え方はしない。
「ある」・「ない」の極論に陥ることなく、中道を歩むことができるじゃろう。
つまり、夢幻法門は大乗仏教の「入口」なのであって「ゴール」ではないのじゃ。
大日経には「全てのものごとは夢・マボロシ」であると書かれておる。
円覚経や楞厳経には「マボロシの智慧を捨てろ」と書かれておる。
「三摩波提(サマーパティ)」という修行法があるが、これは「マボロシを打ち消すために一時的にマボロシの智慧を起こす」というものじゃ。
禅宗はそういった回りくどい方便は採用しないので、夢幻法門も使わない。
だから禅師が「夢・マボロシ」の話をするときは「夢・マボロシ」について研究せよ言っているのではなく、「仏の教えも俗世間の教えも「夢・マボロシ」だとわかっているのであれば、そんなものは全部捨てちまって自分の問題の核心に迫れ!」と言っておるのじゃ。
禅宗の第三代伝承者である僧璨(そうさん)和尚は言ったよ。
「空中を舞う夢やマボロシの花びらをつかもうとムキになってどうする。得るとか失うとかイイとかワルイとか、全部いっぺんに捨てちまえ!」、とな。
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