別訳【夢中問答集】第四十六問 他人の批判をしてはダメ? 2/3話

他人の批判と自他の区別をやめてしまったとしても、それだけではまだ足りない。
両親が生まれる前まで遡って「自分」を見つけられるのでなければ、真実の修行者とはいえないのじゃ。

よくよく考えてみるがいい。
そもそもオマエはいったい何ものなのだ?

かつて禅宗第六代伝承者の慧能和尚は参禅しにきた南岳和尚に向かって「そうやって来たオマエはいったい何ものだ?」と尋ねたそうじゃ。

その時の南岳和尚はどう答えたらよいのかわからず、絶句して退去したのじゃが、その後八年してハッと気づくところがあった。

そして再び慧能和尚のもとを訪れて「それは言葉で説明できるものではありません(説似一物即不中)」と答え、ようやく慧能和尚のOKをもらったという。

最初に尋ねられたときに即答できなかったのはアレだが、それから考え続けて結論を出せたというのはたいしたものじゃ。

逆に言えば、このぐらいでなければたとえ千回生まれ変わったとしても究極の真実はつかめないということじゃ。

今どきの連中は、「オマエは何ものだ?」と訪ねられようものなら日頃ふくらますだけふくらました妄想を全開にしてしまって、「オレはオレ様以外の何ものでもない!!」などと開き直ってみたり、「そういうおまえは何ものなんだ!?」と逆質問してみたり、あるいは眉をつりあげて目玉をギョロつかせ、拳を突き上げてみたりとやりたい放題じゃ。

また南岳和尚の「説似一物即不中」をすっかり誤解してしまって、「オレより上には何もない! オレより下にもなにもない!!」などと言いだすヤツもおるな。

「つまらんことを聞くな!」とばかりに頭ごなしに大声で一喝してくるヤツもおれば、それすらも省略してサッと席を立って帰ってしまうヤツもおる。

・・・そんなことでは五十六億七千万年後に弥勒菩薩がするまで待っても悟ることはできないのじゃがな。


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