別訳【夢中問答集】第六十六問 「神我の見」って何? 3/3話

この「心」というヤツは実に不思議なもんでな、全宇宙に充満しているからといって広いわけではなく、微細な粒子の中にあるからといって小さいわけでもない。

一切の形状から離れたものであるにも関わらず一切の形状を現し、その徳性が果てしないからといってそれを誇ることもない。

中身が真実だとかウソだとかの判断がつくハズもないし、外形に関する議論のしようもない。だというのに、真実を正しく見ることができないヤツらは「心こそが仏だ!」などと聞こうものなら「喜怒哀楽の感情があることこそが仏なのだ」とカンチガイする。

数々のお経は、そんな連中のカンチガイを直すために書かれたといってもよいぐらいじゃ。

書かれた内容を理解できたなら、究極の真実を悟れないまでも、魚の目玉と宝玉の区別ぐらいはつくようになるハズじゃ。

近頃の連中はだいたい前世での修業が足りないもんじゃから、テキストを重視する宗派に属したならばお経に書かれたことを理解することが目的になってしまって、自分の「心」に対する研究がおろそかになってしまう。

じゃあ禅宗ならどうかといえば、「経典研究は禅宗でやることではない」と考えてサボるのみならず、「心」の研究もしないという有様……

真の意味で「俗世間の妄想も、それを克服するための修行も無用!」と思い定めて、ただひたすらに究極の真実のみを追い求めるぐらいの気持ちがあるのならよいのじゃが、経典研究を全くせずに妄想に妄想を積み重ね、その心の動きこそが本当の「心」だと思い込むなどというのは、とんでもない間違いじゃ!


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