この手の問答は例えば切り立った崖の上に追い詰められたようなもので、進退極まりないと言わざるを得ませんが、ここで命を顧みずに崖からジャンプできるような人がいたとするならば、その人のところには維摩のオッサンの方から友達にして欲しいと言ってくることでしょう。
逆に、それができないというのであれば、手すりにつかまりながらでないと進めないスケート初心者レベルをいつまでたっても卒業できません。
その点、雪竇和尚は最初から命を捨ててかかっていましたから、このエピソードについてもこんなポエムを作っていましたっけ。
おいコラ、維摩のオッサン!
まったくアンタって人は、そんなにやつれ果てるまで一人で思いつめた挙句に寝込んじまうなんて・・・・・・
しかも見舞いに来るのがよりによって7人の仏の師匠をつとめるようなヤツだってんで、慌ててバタバタと部屋を片付けたりなんかして。(笑)
ところでオッサン、あの時の質問の件だけどさ。
アンタ、結局ちゃんと答えたのか答えられなかったのか、本当はどっちなんだい?
金色のライオンを乗りこなすような文殊菩薩でさえ、うまいこと丸め込んじまったようだけど。
冒頭いきなり「コラ!」とか言っちゃってますが、これはそんなに叱られるようなことでしょうかね?
先程に申し上げましたが、維摩のオッサンというのは大勢いる仏たちの中の一人なのです。
かつて簡和尚は、「維摩のオッサンは既に自分自身が仏だというのに、なんでまた改めてお釈迦様の話など聞きに来たのですかね?」という質問に対して「いや、彼はそういうところにこだわらないんだよ。」と答えたとか。
―――――つづく
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