コーカリカ 後編(出典:賢愚経)

「おい、シャーリプトラ、モッガラーナ!

オマエたち、今回の件で自分たちは被害者だとか思っているとしたら大間違いだぞ!

折角の聖人パワーをなぜコーカリカのために発揮してやらなかった?

今は仙人になっているヴァッガも同罪だ!

ちょこっとでもミラクルパワーを見せつけてビビらせて黙らせることができていたなら、ヤツも地獄行きを免れただろうに。

今回のことは、見方を変えればオマエたちがコーカリカを地獄送りにしたようなもんだ。

これだから自分を救うことにしか興味がない修行者はダメだというのだ!

私の三代前のブッダであるクルソン仏の時代の話をしてやろう。

定光という名の修行者が同じように小屋で女性と雨宿りしたことを仲間の修行僧達に見咎められたことがある。

その時定光は、いわれのない誹謗中傷を受けながらも「これはイカン!このままでは仲間が地獄行きになってしまう!」と仲間のことを心配し、上空100mまで急上昇するとともに十八種類のイリュージョンをやってみせたのだ。

それを見た仲間の修行僧たちは度肝を抜かれ、「こ、これは凄い!10cm空中浮遊するだけでも相当の修行を積んだ聖人だというのに。大変失礼いたしましたーっ!!」と全員でスライディング土下座して詫びを入れたということだ。

その御蔭で彼らは地獄に堕ちずに済んだのだ。

これぐらいのことができて、ようやく菩薩を名乗ることができるのだ。

自分だけ良ければいいというのではなく、常に相手のことを考えて行動しろということだな。

・・・なんだオマエたち、納得いかないのか?。

さては「それならさっきコーカリカが来た時にそうすればよかったじゃないですか」とか思っているな!?

いいか、よく聞けよ。

オレは今さら言うまでもなく万能にもほどがある凄いヤツなのだが、それでもできないことが3つだけあるのだ。

1.縁のない人を助けられない。

2.全人類を救済し尽せない。

3.既に作られてしまった原因から結果が発生することを防げない。

この3つだ!

コーカリカはオレのところに来るまでに、既に地獄行きの原因となる業(ごう)を作ってしまっていた。

そうなってしまってからでは、さすがのオレもそこから発生する結果を防ぐことはできないのだよ。

折角オレと知り合って教えを受ける縁を得たというのに、なんとももったいない話だぜ。」


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