動物達は皆、ペンギンの勇気ある発言に惜しみない拍手を送った。
続いて動物一の賢者、フクロウが咳払いをして立ち上がった。
「それではワシは、人間にワシの知能を授けよう・・・・。これで人間は、地上で最も頭のよい生き物になるじゃろう」
動物達はフクロウの知恵に一目を置いていたので、その申し出に驚きつつ拍手を送った。
フクロウまでもが、自らの頭の良さを人間に明け渡すというので、動物達は次々と授け物を申し出た。
「空が飛べるのと、頭が良いのでは不十分です。私は『勇気』を人間にあげましょう!」
と勇敢なウサギが言った。
「ウサギ君、それはとても勇気のある行動です。しかし君はその代わりに『勇気』をなくし、とても臆病な動物になってしまうのだが、いいのかね?」
「地球を救う為です。しかたがないです。しかし、臆病な人間はこれで、とても勇敢な行動をとってくれる事でしょう!」
動物達はウサギの勇気に、大きな拍手を送った。
続いて地上で一番、目がいいと言われるモグラが言った。
「ワガハイは視力を人間に授けよう。この視力で人間は地上のありとあらゆる事が見渡せるようになるだけではなく、遥か宇宙の彼方までもが見渡せるようになります」
「しかし君は、その代わりに目がとても悪くなってしまう。君は、地上の美しい景色を見るのがすきだったのではないのかね?」
「ええ。でもこの視力は地球の危機を救う為には、必要です。もはや私は地上の美しさを見る事はありませんが、その代わり必ず我々を救ってください。約束ですよ」
とモグラは人間の子供に言った。
人間の子供は泣きそうな顔で動物達の申し出を、うつむきながら聞いていた。
あまりにも責任感が重すぎる為、何も言う事が出来ずにいたのだ。
その様子を見て、オウムはイヌとネコに言った。
「君たちは人間ととても仲がいい。そこでどうだろうか。君たちは絶えず人間の側にいて、彼らの事を見守ってあげてほしいのだが。人間はこの先、苦難の道を歩む事になる。彼らがくじけそうになったら、励ましてあげてほしい」
「勿論です!私たちは人間の事がとても好きです。ですので、人間の事を助け見守る役目は我々にお任せください!・・・・・頭が良くなった人間は、苦労も増えるでしょうし、孤独になる事もあるでしょう。そんな時、我らイヌとネコは人間の孤独を癒し、少しでも楽になるように、側にいる事を誓います」
会場の動物達はイヌとネコの献身的な発言に声援を送った。
人間の子供は、イヌとネコを抱きしめて礼を言った。
「僕はこの先、とても不安なんだ。ありがとう。君たちとはこれからもずっと、何千年も友達だね!」
それを見てバクは言った。
「では俺は『夢』を君たちに捧げよう。君たち人間はこれで夢を見る事ができる。将来が不安になった時、『夢』は必ずや君たちの役に立つ。夢を抱き、それを思い出す事で君たち人間は困難に打ち勝つができる!」
「ありがとう!がんばってみるよ。・・・でも僕ら人間はとても命が短いんだ。そんな僕らにどこまでの事が出来るか・・・・」
それを聞き、長生きのネズミは手を上げて言った。
「ではワシは自分の『寿命』を君たち人間に授けようぞ。これで君たちは、長生きできるようになる。長生きすれば、きっと危機を回避する方法を考える時間ができよう。
ワシらネズミは短命になるが、その代わりにワシらは子孫をたくさん増やす。将来、地上にはワシの子孫が大勢増える事になるがね。そこは大目に見てほしい」
動物達はネズミが自らの「寿命」を捧げると聞き、大いに驚いた。
そこで、ニワトリは翼を上げ言った。
「・・・・ネズミは自らの命を捧げました。では私は『卵』を人間に授けましょう。
私の産む卵は地上で最も栄養があります。卵を食しますと、元気になりますし、更に頭がよくなるでしょう!いえ、それだけではありません。時には私自身を食してくださいまし。こう見えて、私はとても美味しいんですよ」
と言ってニワトリは人間の子供にウインクした。
人間の子供は驚いてニワトリを見た。
それを聞き、牛がのっそりと立ち上がり言った。
「あたしの出すミルクもとても栄養がありますのよ!あたしは人間にミルクを授けますわ。
ミルクを飲みますと、更に勇気がでますし、力も付きますわ。
もっともっと力をつけて、私たちを救ってくださいね。お願いしますよ!
・・・ええ、私たちを救ってくれるのならば、私も自らの事を人間に捧げましょう。
どうぞ私の事も食べてください」
自らの命を次々と差し出す申し出に動物たちは皆、驚いた。
何か他に出来る事はないか、しばらく話し合いが続き、話がまとまった所でインパラが立ち上がり言った。
「議長、我々は話し合いの末、我々も死した後に自らを捧げる事にしました。
・・・我々、動物は死した後、この大地に眠り『燃ゆる水』となりましょう。
人間は『火』を操る事ができます。迫り来る隕石を撃退するためには『燃ゆる水』が必要となるでしょうから」
「ウム、それは良い考えだ。それでは我々は皆、死した後、燃ゆる水となろう。
必ずや人間は燃ゆる水を使い、この世界を守ってくれるであろう」
オウムは会場にいる動物たちを見渡し、そしてこう告げた。
「それでは最後に、これは私からの提案なのだが、我々の持っている『言葉』を人間に授けたいのだが、どうだろうか?」
ゴリラが訝しげに眉をひそめた。
「『言葉』?言葉なんかで世界が救えるのかね?」
動物達から慕われているゾウが長い鼻をゆらしながらゴリラに言った。
「言葉の力を侮ってはいかんゾ。現に私は『言葉』を使いライオンとトラの争いを止めた事があるゾ」
ゾウの言葉を継いでオウムは皆に言った。
「さよう、『言葉』の力は偉大だ。異論がなければ、ここに居る全員から『言葉』を集め、
人間に捧げようと思う。我々動物は『言葉』をなくしてしまうが、人間は必ず『言葉』を使い
世界を救ってくれるであろう。
私は少しの『言葉』を残し、人間に危機を伝える役目を担おう。
遠い遠い未来、私の子孫が役目に目覚め、地球の危機を救うであろう人間にメッセージを伝える事になるでしょう。
・・・人間の子よ、約束してほしい。
我々の捧げた『空を飛ぶ力』、『知能』、『勇気』、『見る力』、『献身』、『言葉』、それに自らの『命』、これらの貢物をムダにする事なく、いつの日か我々動物とこの地球を救う事を」
――――続く
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