とどろき山に登る時には、十分に注意しなければいけない。
とどろき山はよく雷が落ちるので、金属を身につけているととても危険なんだ。
だから実はというと、お父さんの形見のこのナイフは鉄ではなくて、セラミックでできている。
このナイフは村の鍛冶屋が、何年もかけて作った世界に二つとないナイフなんだ。
もう何十年も電気の果実の汁を吸っているので、このナイフは暗闇で少し光る。
僕とレーチェルは山に入ると、僕はナイフを取り出した。
ナイフの光は少し薄暗いけど、それでもほのかに夜道を照らしてくれる。
僕らは険しい山道を上へ上へと登り始めた。
途中、山道では電気ボタルが、青白い光を放ちながら空を舞っていた。
それを見たレーチェルは「わ~、きれい!」と言った。
でも電気ボタルは、とても電気が弱いので捕まえても、売り物にならない。
町へ持っていく土産物としては、いいかもしれないけどね。
電気ボタルが舞う山道を歩いて、僕らは電気ウナギが住むという川へと向かった。
レーチェルは山道を歩くのが慣れていなかったので、僕らは途中で休憩をいれながら、険しい山道を歩いていった。
川のせせらぎの音が聞こえてきたので、僕はナイフをバッグに戻した。
ナイフの光で、電気ウナギに気づかれるといけないからね。
月も出ていなかったので、まわりは真っ暗になった。
「レーチェル、怖いかもしれないけど、静かにしていてね。電気ウナギに気づかれてしまうから」
レーチェルは泣きそうな顔をしながら、うなずいた。
僕らは、川の側の茂みに息を潜めながら隠れて、電気ウナギが現れるのを待った。
そこで30分も待っただろうか?
急に、川がピカリと青白く光り、何か大きな物が川底から上へと上がってきた。
電気ウナギだった。
電気ウナギは思っていたよりも大きかった。
電気ウナギはバチバチバチとで電気を放ちながら、川面から顔を出した。
ギョロリと目を光らせ、電気ウナギは周りの様子を見ながら言った。
「・・・・人間の匂いがするぞ。どこだ?こんな所までやってきた人間は?」
――――続く
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