ウイルス・細菌〜40歳を過ぎて体調に異変を感じたらすぐに病院に行きましょう

最近風邪をひかないなと思っていたら、先日黄色ブドウ球菌による炎症でのどが痛くなった。2020年から続くコロナウイルスの蔓延でマスクをすることがすっかり定着してしまい、そのお陰かこの2年間風邪をひいていなかったので久々の体調悪化である。黄色ブドウ球菌は環境中のあらゆる所に存在し、大なり小なり常に黄色ブドウ球菌と我々の免疫が戦っている。これまで私の免疫は黄色ブドウ球菌に対して圧勝であった。

ところが、今回の戦いでは一時相手に有利な状況を作り出してしまった。つまりのどの炎症を起こしてしまったのだ。圧勝することが当たり前であったこの黄色ブドウ球菌に対する戦闘で、少しでも隙を見せる形になってしまった原因を考察すると、少し疲れて免疫力が低下していた可能性がある。とはいえ、これまでは疲れ気味の時であっても撃退してきた実績を考えると、基礎的な免疫力の低下ととらえるのが妥当である。

今回のどの痛みは右側だけが痛く、鏡で奥を観察したら腫れていた。通常の痛みと違うと感じて耳鼻科に行って診てもらったのだが、観察するだけでは原因を突き止められるはずもなく、医師は炎症部分の組織を採取し、更に血液検査を行った。5日後に再度受診したところ黄色ブドウ球菌による炎症だと判明したのだが、1回目の受診の時に炎症を抑える薬と抗生物質が処方された。医師の意図するところは細菌による感染症と推察されるが、片方だけの炎症というのは不可解である。まずは抗生物質で細菌を抑制しつつ、検査結果を待つという戦法に打って出たと勝手に解釈している。その見立て通り黄色ブドウ球菌が検出され、血液でも炎症を示す数値が上昇していた。もし、細菌が検出されず炎症も起こっていないとすれば別の原因を探すことになるのだと思う。医師は常に謎解きゲームを行っているようなものである。

皮膚を怪我して化膿したときは黄色ブドウ球菌による感染が疑われる。また、食べ物がうまく飲み込めずむせてしまった後、肺炎を起こすことがあるが、その時は黄色ブドウ球菌による肺炎を疑う必要がある。また、血液中に黄色ブドウ球菌が侵入してしまい髄膜炎、関節炎、敗血症などを引き起こす。免疫力が低下したとき、これらの症状に対抗するため抗生物質が使われる。

抗生物質は細菌の繁殖を抑制する働きを持っているが、抗生物質が効かない細菌、いわゆる耐性菌が多く存在する。抗生物質が発見されるきっかけになったのが青カビによるブドウ球菌の繁殖抑制である。後にブドウ球菌の繁殖を抑制させる物質はペニシリンだということが判明し、大量生産され、大量処方されることとなった。ところが、ペニシリンが効かない黄色ブドウ球菌が出現してしまったのである。現在では多くの黄色ブドウ球菌がペニシリン耐性を持っているそうである。細菌による感染症には抗生物質でその繁殖を抑制している間に自身の免疫力によって打ち勝つ。ロールプレイングゲームに出てくる敵で、弱いがやたらと分裂するモンスターのように、こちらの攻撃力が弱いとなかなか倒すことができない状況に陥る。その時抗生物質は分裂の呪文を封じ込める役割がある。

一方でウイルスによる感染症でものどの痛みなどの同じような症状が出る。もし私が5日間の抗生物質摂取でのどの痛みが改善しなかった場合はウイルスによる感染症を疑ったと思う。ウイルスには抗生物質が効かないのである。ウイルスの増殖を直接抑制する方法は今のところ限られており、基本的には熱や鼻水の発生を抑えるだけで、対症療法が一般的である。分裂するモンスターに対してこちら側も一体一体倒していく持久戦しかないのである。ロールプレイングゲームであれば倒した敵の数だけ経験値がもらえるが、ウイルスに対しては経験値の代わりに抗体を獲得することができる。抗体によってレベルアップした状態であれば増殖速度を上回る攻撃速度で撃退し、次回からは軽傷で済むのである。

ロールプレイングゲームであれば一度上がったレベルは下がることはない。ところが人間の免疫力は20代から30代をピークに低下する。ちょっとしたことで体調を崩してしまった経験が重なることで、自身の免疫力低下を否応なく認識させられる。後はこの低下率をどれだけ最小化できるかが長生きのポイントである。そのためにまずは体重を減らす必要があるかもしれない。いや、それよりもよく食べて、よく寝るべきだろうか。

(by ぐっちー)

※このエッセイ「妄想生き物紀行」第59回はポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」第60回「ウイルス・細菌」と関連した内容です。また、2022年10月現在の最新回・第123回「オオネズミクイ」のオープニングとも関連しています。ポッドキャストもお聴きになると一層お楽しみいただけますのでぜひどうぞ! ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です、詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第60回「ウイルス・細菌〜40歳を過ぎて体調に異変を感じたらすぐに病院に行きましょう」いかがでしたでしょうか。

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