スティングレイって何?
そう思った方もおられるのではないだろうか。
スティングレイはいわゆる海に生息する平たい形をしたエイの仲間である。スティング(sting)は刺す、レイ(ray)はエイで、日本語ではアカエイと訳されることが多い。しかしながら、英語版Wikipediaを参考にするとスティングレイはアカエイも含まれるトビエイ目のエイ全体を指すように見受けられる。つまり、刺すエイを指すと理解していいかもしれない。
エイの体は遊泳方向に対して水平に扁平である。エイと同じ軟骨魚綱であるサメと見比べてもほぼ見分けが付く。水族館では大きな水槽に複数の種類の魚が同時に飼育されていることが多いが、その中でもひときわサービス精神旺盛なのがエイである。エイは水槽の底に沿って泳ぎ、ガラスに近づくと腹側をみせて上昇するように泳ぐ。エイは近くまでやってきて全身をくまなく披露してくれる水族館のアイドルなのである。
一方、サメは同じく大きな水槽で飼育されているものの、中層を悠々と泳ぎ回り、気品を感じさせる大物演歌歌手のような存在である。客に媚びず我が道を行くサメには人を惹き付ける魅力があり、近寄りがたいオーラが漂っている。
では、このエイとサメの違いはどこから来るのだろうか。流線型がサメで扁平なのがエイ?。概ね間違いではないのだが、世の中には「どっちやねん!」と突っ込みたくなる生き物が多いので、この辺ははっきりしておかなければならない。例えばノコギリザメとノコギリエイである。是非この2種を見比べてもらいたい。
ノコギリザメ:https://nagoyaaqua.jp/friends/south/1022/
ノコギリエイ:https://kids.rurubu.jp/article/35213/
一見して体型だけではサメかエイかを見分けることは困難である。しかしよく観察してみると、エラの位置が違う。ノコギリザメのエラ穴は体の横に付いているが、ノコギリエイのエラ穴は体の腹側に付いている。つまり、サメとエイを分けるポイントはエラ穴の位置なのである。
サメとエイを見分けるポイントが分かったら水族館に出かけてみたくなっただろう。その時は是非シノノメサカタザメを観察して欲しい。シノノメサカタザメは沖縄の美ら海水族館、大阪の海遊館、愛知の名古屋港水族館、東京の葛西臨海水族園などで飼育されているので近くの方は直接見ることをお勧めする。
シノノメサカタザメを観察するとあることに気付くはずである。そう、エラ穴が体の腹側にあるのだ。サメという名前なのにエイの仲間なのである。シノノメサカタザメは演歌歌手のような存在感を醸し出しつつ、アイドルのような親しみやすさを併せ持つ、氷川きよしさんのような存在なのである。
サメ類は今から約4億年ほど前に出現したと言われており、エイはサメの一部が進化したとされている。サメは中層を泳ぎ、魚類を捕食して繁栄した。そのうち様々な種類が出現しだしたので中層域は競争が激しくなったと推測される。そこで、生息場所を海底に求めたのがエイである。海底に体を密着させて外敵から身を守るためには体が扁平な方が生き残りが良かった。演歌歌手にアイドル性を求めた努力が花開いた瞬間である。
海底生活が板に付いてきたものの、扁平な体は上からの攻撃に弱い。外敵生物から身を守るためトゲを持つエイが出現した。つまりスティングレイである。他人を傷つけるためのトゲではなく、自分の身を守るためのトゲを身に着けたスティングレイはようやく安心して生活することができるようになったのである。
あなたの周りにもトゲのある言い方をする隣人がいるかもしれない。その隣人は最初からトゲのある言い方をしていたわけではなく、何かのきっかけでそうなったと考えるほうが自然ではないか。家庭環境なのか職場環境なのかはわからないが、他者からの攻撃に対して身を守るための防御手段としてトゲを装備したのだ。
あるいは、もともと明るいファッションを好んでいたにもかかわらず、社会的要求により質素な服装を強いられていた人がいたとしたら、相当ストレスを抱えていたことだろう。ようやくその制約が解除されつつあるとき、その人の服装を批判することは、その人にトゲを生じさせる危険な行為であることを自覚しなければならない。その人をスティングレイにしてはならない。
(by ぐっちー)
<編集後記>*最後に重要なお知らせがあります!*
※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第40回「スティングレイ」 と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。
ぐっちー作「妄想生き物紀行」第40回「スティングレイ〜サメ、エイ、演歌歌手、そしてアイドルについて」いかがでしたでしょうか。
今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。
こんにちは!
ズンドコ!! 氷川きよしさんは、トゲトゲの服着てもステキに似合いそうですよね!
と、ぐっちーさんのせっかくのたとえも結論も早々に台無しにしたところでみなさま、あけましておめでとうございます。今年も「妄想生き物紀行」をどうぞよろしくお願いいたします。
サメとエイの違い、思わず「オウムとインコの違い」を連想しました。生き物の分類って、演歌歌手とアイドルの違いを厳密に定義してもいずれ演歌アイドルが登場するみたいなものなんでしょうか。
Twiterでぐっちーさんと話そう企画
さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、Twitterでお話したいと思います。スティングレイについて、演歌歌手とアイドルについて、トゲトゲファッションについて、などなど何でもお話しましょう。参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、質問してみたい人はもちろんただお話してみたい人も、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!私はエイといえば語りたい話があってウズウズしております。
斎藤雨梟のTwitterアカウント @ukyo_an にて
↓こんな感じで↓ツイートしますので、よろしければみなさまもツイートへ返信してご参加ください。
新連載 #妄想旅ラジオ パーソナリティー ぐっちーさんのエッセイ「#妄想生き物紀行」第1回 読んでいただけたでしょうか? ここで、ぐっちーさん@mousou_guccy へいろいろお聞きしてみたいと思います!https://t.co/DcVywwH7p5
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) July 7, 2020
ぐっちーさんとお話ししたもようは、来週こちらのサイトでまとめてお伝えします。Twitterでいただいた質問やコメントは記事内でご紹介させていただくことがあります。どうぞよろしくお願いいたします。では、Twitterでお会いしましょう!
最後に重要なお知らせ <まだまだリクエスト受付けます>
ぐっちーさんのエッセイ「妄想生き物紀行」で取り上げて欲しいテーマを募集します。是非ご応募ください!
<リクエスト募集の趣旨>
この「妄想生き物紀行」は、毎回、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」で取り上げたテーマに対応した内容のエッセイをお送りしていますが、41回(2022年1月18日公開予定)は対応するラジオ放送が「お便り紹介回」であるため、「妄想生き物紀行」独自テーマとし、みなさまからのご応募から決めます。
<リクエストの内容>
募集するテーマは、
*エッセイ公開日が1月18日であるため、この日付にちなんだもの
*日付にこだわらず、1月、冬、など季節にまつわるもの
*まだ「妄想旅ラジオ」で取り上げられていない生き物
*その他、これというのがあればご自由に
などです。つまり自由です。
<リクエストの方法>
*Twitterで、ぐっちーさんのTwitterアカウント か 斎藤雨梟のTwitterアカウントにリプライ(任意のツイートを選んで「返信」ボタンを押して書き込み・送信する)してリクエスト
*ホテル暴風雨コンタクトフォームから、題名を「妄想お題」としてリクエスト
のいずれかでお願いします。
<リクエスト採用方法について>
ぐっちーさんの執筆欲をビビビッとそそるリクエストが来た時点で採用とさせていただきます。つまりぐっちーさんの気分次第。ですのでお気軽に、お早めに、ぜひぜひご応募ください。お待ちしております!
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