「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第10回 ダイオウイカ〜ダイオウイカ率いるイカ王国の住人達、その多様な生態に迫る」
ダイオウイカは軟体動物門、頭足綱、十腕形目、ダイオウイカ科、ダイオウイカ属、ダイオウイカに分類されるイカの仲間である。十腕形目は開眼目、あるいはツツイカ目とする分類もあり、必ずしもこの表記が正しいとは限らない。しかしながら、ダイオウイカは十腕形目(イカ類)の中で最も大型な種であるだけでなく、軟体動物の中でも最も大型な種である。イカ王国があるとすれば、紛れもなく大王である。
イカ王国には我々にも馴染みが深いヤリイカ、ケンサキイカ、スルメイカ、ホタルイカなども住んでいる。また、アカイカ、ソデイカ、ジンドウイカなど聞き慣れない名前であるが、外食で出されるイカ焼きやイカの天ぷらなど、多くの人が食べたことのある種類のイカも住んでいる。おそらくヤリイカとケンサキイカは軍隊に所属し、ホタルイカは電力会社、ジンドウイカは裁判所に勤めているのだと思う。その他はご想像にお任せする。
イカ王国の王はもちろんダイオウイカである。ダイオウイカはその体の大きさだけでなく、眼球の大きさは生物界最大とされている。そのダイオウイカ率いるイカ王国はクジラ王国のマッコウクジラに狙われている。ダイオウイカはイカ王国を守るためマッコウクジラの攻撃を受けつつも、その腕でマッコウクジラの顔面に爪痕を刻んで対抗するのである。そんな勇猛果敢なダイオウイカも実は同じイカ王国の住民であるアカイカを捕食する暴君でもあるのだ。
イカ王国はダイオウイカによる盤石な支配がなされていると思われていたが、実は南極に住むダイオウホウズキイカに王位を狙われている。ダイオウホウズキイカは体長こそダイオウイカに及ばないものの、重量はダイオウイカよりも重く、眼球はダイオウイカと同じくらいの大きさである。つまり、大きさを取るか重さを取るかで真の大王の座を競っているのである。
一方、ダイオウイカには娘がいる。ヒメイカである。体長は2センチ以下で、沿岸の藻場に生息するイカ王国の中でも最も小さな種類のうちのひとつである。背中に吸着器を持ち、アマモなどの海藻に吸着する。実はヒメイカはその名前からは想像ができないような捕食生態を持っている。ヒメイカはエビなどの小型の甲殻類を主食とするが、エビを捕らえると毒を注入し、その体を麻痺させた後、背中の殻の間から口を挿入し、消化液を出しながらその肉を食べるのである。捕食後のエビは殻だけになり、あたかも脱皮した殻のような状態で捨てられるそうである。姫という名前に似つかわしくない生態である。
イカ王国の電力会社に勤めるホタルイカには複雑な親戚関係が明らかとなっている。ホタルイカは分類学上、軟体動物門、頭足綱、十腕形目、ホタルイカモドキ科、ホタルイカ属、ホタルイカに分類される。ホタルイカよりも上位の分類群にホタルイカの偽物という意味であるホタルイカモドキの名前があるのはなぜだろうか。日本では富山のホタルイカが有名であり、古くから知られていた。その後、ホタルイカに似たイカが発見され、ホタルイカモドキと命名されたのである。ところが、発光するイカの分類をする際、世界的にはホタルイカモドキの仲間が標準的な指標となってしまったことから、ホタルイカモドキ科が採用されてしまった。日本ではメジャーだったホタルイカだが、世界的には珍しい生き物であったのだ。
更にホタルイカ一族にはニセホタルイカという種類もいる。生息域は類似しており、ごく希にホタルイカに混ざってニセホタルイカが漁獲されるらしい。ニセホタルイカはホタルイカよりも一回り大きく、腕が少し太い。もしかしたらホタルイカの中に少し大きめなホタルイカが混ざっていたら、ニセホタルイカかもしれない。
そして更にホタルイカにはダイオウホタルイカモドキという、粗悪な模倣品を売りさばいて暴利をむさぼる反社会的勢力の親分のような遠い親戚がいる。日本近海にも生息し、世界中の温帯・熱帯域で暗躍するダイオウホタルイカモドキだが、たまに定置網などにかかるらしい。外套の部分(腹部)は30センチメートルほどで、重さは1キログラムほどになる。外套の腹側と触腕(特別長い2本の腕)に発光器を持つことからホタルイカを連想させたからこの名前が付いたのだろう。闇の世界の大王と言っても過言ではないだろう。
何事にも好事家がおり、このダイオウホタルイカモドキを食べてみたそうである。まず、焼いて食べてみた結果、食べると口の中に海水のような塩っぱさが広がるとともに、飲み込んだ後もえぐみが口の中に残ると感想があった。次に真水でゆでてみても、同じように塩辛くえぐみが残るそうである。つまり、食用には適さないと結論付けられた。実はダイオウイカも同じように塩辛く、えぐみがあるそうで、周りから持ち上げられて付けられたような「ダイオウ」などと名の付くイカは煮ても焼いても食えないということなのかもしれない。
<編集後記>
※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第10回「ダイオウイカ」 と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。リンク先に聴き方も詳しく載っていますので、ぜひ合わせてお楽しみ下さい。
ぐっちー作「妄想生き物紀行」第10回「ダイオウイカ〜ダイオウイカ率いるイカ王国の住人達、その多様な生態に迫る」いかがでしたでしょうか。
今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。
イカ王国のことをたくさん知ることができた今回、イカの世界も面白イカ? という気がしてきましたね……イカんイカん、オヤジギャグが伝染した。王族の内情も興味深いものですが、「ホタル」を巡るあれこれときたら! ホタル王国ではこのことをどう考えているのでしょう。日本人が、外国からの「ゲイシャ」「フジヤマ」などの日本イメージに対してするように、面白がっているのでしょうか。ホタルの国は源氏とか平家とかいますが王国なのか征夷大将軍が治めているのか合議制なのか、あそこもかなり多くの住人がいる国らしいですし、事情を調べ出したら興味の尽きないことでしょう。ホタルのことはさておき、
Twitterでぐっちーさんと話そう企画!
にて今回も、ダイオウイカについて、イカ王国について、オヤジギャグについて、などなど、ぐっちーさんにあれこれお聞きしてみたいと思います。
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— SAITO Ukyo (@ukyo_an) July 7, 2020
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