リストロサウルス〜リストロサウルスは恐竜の繁栄に貢献していたかもしれない

全長3mを優に超える巨大な両生類ウラノケントロドン(左)に捕らえられたリストロサウルス(想像図) by Dmitry Bogdanov

妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第34回 リストロサウルス〜リストロサウルスは恐竜の繁栄に貢献していたかもしれない」

リストロサウルスは2億5400万年前から2億4800万年前まで生息していた古代生物である。生息期間は約600万年と短いように思えるが、ネアンデルタール人が出現してから30万年から80万年といわれているので、その10倍近い期間繁栄を続けていたと考えると長期間生息していたと言ってもいいだろう。

リストロサウルスという名前から想像すると恐竜の仲間かと思うかも知れないが、実は恐竜ではなく獣弓類と言う哺乳類型爬虫類に分類されている。復元想像図を見ると全長は約1mと私が想像していたよりも小型で、4本足で歩行するが足は短く俊敏な動きは苦手そうである。当初はカバのように水中で生活すると考えられていたが、今では水辺で生活をして水中にはあまり入らなかったのではないかとされている。リストロサウルスには失礼ながら、その風貌から察するに600万年も絶滅せずによく生き残ることが出来たなという印象である。

しかし、リストロサウルスの化石はアフリカ大陸、ユーラシア大陸、南極大陸の広い範囲で発掘されており絶滅どころか大繁栄した。リストロサウルスが繁栄したのは三畳紀前半である。三畳紀の前はペルム紀で、このペルム紀と三畳紀の間を古生代と中生代の境目としている。実はペルム紀の終わりに地上の生物の9割近くが火山の噴火が原因で絶滅したといわれているが、リストロサウルスは数少ない生き残りだったようだ。

大量絶滅の後、地上にはリストロサウルスの天敵となる生物はいなくなった。植物はいち早く火山灰に覆われた土地に進出し、草食性であるリストロサウルスは餌に困ることはなかった。天敵もいない、餌にも困らない。リストロサウルスにとっては天国の600万年だっただろう。このようにしてリストロサウルスは生息域を世界中に広げていったのである。

ところが、三畳紀の後半になると他の肉食動物が進化を遂げて大型化し、そこら中にうじゃうじゃいるリストロサウルスを餌にするようになる。天敵の出現である。リストロサウルスは600万年もの間好適な環境で生息し、大きな進化を必要としない天国で暮らしてきたのだから青天の霹靂だっただろう。あれよあれよという間に大型肉食動物に捕食されて絶滅していったと推測されている。

このようにリストロサウルスは三畳紀の前半にだけ広い範囲で生息する特異的な性質を持つことになる。つまり、リストロサウルスの化石が出土すればその地層は三畳紀前半の地層であることが分かる。一般的にその化石が出土することで地質年代を推定できる化石のことを示準化石または標準化石と呼んでいるが、リストロサウルスは三畳紀前半の示準化石である。

ちなみに、地質年代でみると三畳紀の後はジュラ紀であり、リストロサウルスが絶滅した頃から恐竜が出現する。リストロサウルスが広範囲に多数生息したことで、それを餌にする大型肉食生物もまた多数生息できた可能性が高い。もしかしたら恐竜の繁栄にはリストロサウルスが大いに貢献していたのかも知れない。この仮説について恐竜博士の小林快次先生に聞いてみたいものである。

さて、リストロサウルスの化石は南極大陸でも発見されており、短足の(失礼)リストロサウルスには泳いで渡ることは不可能だと思われる。リストロサウルスの化石が広い範囲で出現している理由は、これらの大陸が昔は陸続きであったからだとされている。リストロサウルスの他にもグロッソプテリスという植物や、キノグナトゥスやメソサウルスといった動物も大陸移動説の有力な証拠となっており、陸続きであれば短足の(再び失礼)リストロサウルスでも生息域を広げることが出来た。この大陸のことをパンゲア大陸と呼んでいる。

パンゲア大陸はリストロサウルスが生息することが出来るくらい温暖な気候であったはずである。少なくとも南極のような極寒で植物も生えないような環境ではなかった。つまり今の南極大陸は暖かいところから移動してきたと考えられ、その証拠がまたしてもリストロサウルスなのである。このようにその化石が出土することで当時の気候が推定できる化石のことを示相化石と呼ぶ。例えばサンゴの化石はその場所が当時温暖な浅い海であったことを示す示相化石である。

古生物の花形といえばティラノサウルスである。地球史上最も強い生物だと言っても過言ではない。恐竜好きの子供たちはその強さに魅了され熱心に調べ上げる。そして疑問に思ったことはNHKラジオ子供科学電話相談で小林快次先生に質問するのだが、自分が質問する答えを聞く前に小林先生からの質問に答えなければならない。その質問に答えられて初めて自分の質問の答えが返ってくるのである。小林先生は子供に対してでも容赦なく難しい質問を投げかけてくるが、驚くことに多くの質問者の子供がそれに答えられる。私が聞いていてもちんぷんかんぷんである。そんな私がリストロサウルスの貢献について小林先生に質問しようとしても答えを頂く自信はないので、今回は妄想に留めておくことにする。

(by ぐっちー)

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第34回「リストロサウルス と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第34回「リストロサウルス〜リストロサウルスは恐竜の繁栄に貢献していたかもしれない」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

リストロサウルス、ちょっと間抜けな(失礼)風貌といい、恐竜より少し前に大繁栄して滅んだという歴史といい、興味が尽きません。それにぐっちーさんが小林先生に質問するところ、妄想するだけで楽しいです。小林快次(こばやし・よしつぐ)先生は「NHKこども科学電話相談」の名回答者。NHKラジオ第1でかつては夏休みのスペシャル企画だったこの番組、現在は毎週日曜日の午前中に放送しています(2021年10月現在)。

テキストに起こされてブラウザで読むことのできる回もあるので今すぐ楽しめますよ!
例えば↓こんな↓質問に答えてもらえます。

人間は昔サルだったけど、恐竜はなんだったの? (答えてくれる先生・小林快次先生)

相談者である恐竜博士レベルの子供たちも、そうでない人も満足し、楽しめる、わかりやすい説明とハイレベルな会話の応酬が見どころのようです。

本にもなってます!(amazonにリンク)

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さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、Twitterでお話したいと思います。ラジオには小林先生が、インターネットにはぐっちーさんがいます。リストロサウルスについてぐっちー先生にTwitterで質問してみよう! 参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、質問してみたい人はもちろんただお話してみたい人も、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!

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