コアラ〜コアラの人気にも負けないユーカリ人気。関心を持つという支援もあります。

「妄想旅ラジオ」ポッドキャスター ぐっちーが綴るもう1つのストーリー「妄想生き物紀行 第29回 コアラ〜コアラの人気にも負けないユーカリ人気。関心を持つという支援もあります。」

コアラは哺乳綱、双前歯目、コアラ科、コアラ属に分類される有袋類である。現在生息するコアラは1科1属1種であるが、過去にはコアラ科、コアラ属としてオーストラリアの中部や北部で化石が発見されている。あの愛くるしいコアラの近縁種としてかつて存在したコアラの親戚を見てみたい気もするが、声を聞いていいなと思っていた人が実際会ってみるとガッカリという現象の可能性もあるので、今のところ妄想だけにしておく。

コアラは腹部に子供を育てるための育児嚢と呼ばれる袋状の器官がある。いわゆる有袋類である。有袋類は分類上哺乳綱と双前歯目の間に有袋上目という項目を設けて分類されることが多い。これまでもこのコラムで紹介したとおり、生物の分類は常にアップデートされていて、さらに様々な議論が継続中であるので断定するのが難しい。かつてはオーストラリアに生息するコアラを3つの亜種に分類する方法が主流だったが、今では遺伝的にそこまで分化していないという結論のようである。

有袋類と言えばオーストラリアにしか居ないようなイメージがあるが、アメリカ大陸にも生息する。それはオポッサムである。オポッサムは主に北アメリカ大陸の大西洋沿岸に生息し、敵に攻撃されると死んだふりをする少し変わった生態を持つ有袋類である。オリンピックでメダルを獲得した瞬間、卒業以来ほとんど交流がなかった恩師とされる人がインタビューを受けていたり、テレビ出演した際に葬式で一回だけしか会ったことがない遠い遠い親戚から電話がかかってきたりする現象に似て、コアラ一家の人気ぶりにオポッサムは少し変わった生態で人の気をひこうと考えているのかも知れない。オポッサムに一言言うとすれば、「君の気持ちはよく分かる」である。私も親戚が金メダルを取ったら虎の威を借る狐状態になっているだろう。

さて、コアラは特に子供からの人気を集めている。ある子供を対象とした動物人気ランキングでは9位だった。全世界で知られている生物は175万種といわれている中、そのうちの9位である。コアラよりも上位の動物はイヌ、ネコ、ウサギ、パンダ、ペンギン、ハムスター、イルカ、リスであり、納得のラインナップである。更に、なりたい動物ランキングでは堂々の3位、銅メダルを獲得している。食べて眠ってのんびりしたいというのがその理由だそうだ。

コアラは1日20時間ほど眠る。残りの4時間は餌を食べている。つまりコアラは食べられるだけ食べて、寝られるだけ寝ているのである。コアラの主食はユーカリの葉っぱである。ユーカリはオーストラリアとタスマニア島に分布するフトモモ科の植物で、その葉には青酸化合物が含まれている。ヒトがたくさん食べればお腹を壊す程度の毒性らしいが、他の生物にとっては食べ物としては認識されていない。この毒とユーカリの葉を腸内細菌を使って消化するために20時間の睡眠と、2メートルに及ぶ盲腸が必要なのである。

どうしてコアラは他の動物が食べないユーカリを食べるようになったのだろうか。その昔コアラの祖先は他の植物を食べていたと思われる。ところが、大陸の移動などでオーストラリア大陸は乾燥化が進み、乾燥地域でも生息可能なユーカリの木が繁栄することになった。多くの生き物はユーカリを餌として利用できなかったが、コアラの祖先は他に食べる物がなくて仕方なくユーカリを食べるようになったと推測される。もしかしたら一部のコアラ祖先はユーカリの毒でお腹を壊して死んでしまったかも知れない。そして一部のコアラ祖先はユーカリの青酸化合物をなんとか解毒する能力を持っており、20時間の睡眠と引き替えに生き延びて子孫を残すことに成功したのだろう。

ユーカリは500から600種ほどに分類されるが、コアラが食べるユーカリは40種類程度といわれている。また、個別のコアラは選り好みが激しく、食べられるユーカリは10種類程度で、若い葉しか食べないといわれている。動物園でコアラを飼育する時、最も苦労する点は餌の確保である。ユーカリは日本でも栽培することはできるが、コアラの好みに合わせた種類を継続的に栽培することは非常に難しく、高額な餌代がかかってしまう。

大阪の天王寺動物園では2014年に3頭のコアラを飼育していたが、その餌代が年間6400万円と高額で、動物園全体の餌代の4割から5割を占めた。そのため、天王寺動物園はコアラのリストラを決め、2019年10月までに3頭のコアラを他の動物園に無償で貸し出した。いかに人気があるコアラといえども、高額な餌代を考えるとリストラも考えざるを得なかったのだろう。しかしながらコアラは動物園の人気上位であり、集客の目玉でもあるので、コアラをリストラする決断には断腸の思いだったに違いない。経営改善のため高額な役員報酬で迎えた外国人社長だったにもかかわらず、経営が上向かなかった場合、最初にリストラされるのは高額報酬の外国人社長というわけだ。勝手に他の動物園に逃げ出さなかっただけ良しとしなければならない。

しかし、最近日本ではコアラの餌であるユーカリの栽培が盛んになってきている。平成22年、東京都中央卸売市場でのユーカリ年間取扱高は約1億1000万円だったが、10年後の令和2年の取扱高は3億3000万円あまりと、3倍以上に膨れあがっている。ユーカリはコアラの餌にとどまらず観賞用として人気を集めており、結婚式の飾りとしても使われているらしい。あまりの人気に生産が追いついていないため、単価も平成22年の1束150円から240円に高騰し、益々コアラの餌代に頭を悩ませる動物園が多くなっているだろう。

コアラは平成8年には国内で96頭が飼育されていたが、令和元年には約50頭と数を減らしている。病気や繁殖の難しさが原因とされているが、高額な餌代も主な要因である。コロナ禍で地方自治体の財政が逼迫する中、予算が減額されている動物園も多いと聞く。生命維持の要である餌代はこれまで聖域とされていたが、廃棄される野菜くずなどを利用して節約に努めているもののそれも限界に近い。一般から寄付を集めている動物園もあり、コロナ後にも様々な動物を観察できるよう、動物園のTwitterアカウントをフォローするなり、寄付するなり、それぞれが可能なことから支援していきたい。

(by ぐっちー)

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第29回「コアラ と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第29回「コアラ〜コアラの人気にも負けないユーカリ人気。関心を持つという支援もあります。」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

ユーカリというと、コアラの食べものである他、スースーした清涼感があって花粉症に効くハーブというイメージがありますが、観賞用としてそんなに人気だったとは知りませんでした。

妄想旅ラジオ第29回「コアラ」は、コアラはグルメなのかグルメじゃないのか……の謎に迫るのがぐっちーさん担当の生き物パート。「食」「旅」は、何が取り上げられるかに毎回そうきたか〜と唸るのも楽しみのひとつなので、まだ聴いていない方はぜひ、聴いてみてください。私の中では、「食の話」担当で、Twitterで「ぐっちーさんと話そう」企画にもよくご参加くださるポチ子さんの驚くべきコレクター癖がいよいよ明らかになった記念回でもあります。さてポチ子さんは何を集めるのか!? これも聴いて衝撃を受けてください。

Twiterでぐっちーさんと話そう企画

さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、Twitterでお話したいと思います。コアラについて、ユーカリについて、好きな&なりたい生き物などなどについて、お話お聞かせください。参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!

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