クズリ〜空気も、カッパも、UFOも、クズリも、あなたの中に存在しますか。

「存在する」とはどういう事だろう。

空気は存在するだろうか。現代社会に生きる我々にとっては愚問であるが、500年前だったらどうだろう。1774年になって初めてジョゼフ・プリーストリーが酸素を発見したとされており、一般市民が空気の存在を認識していたかどうかは甚だ疑問である。  

カッパは存在するだろうか。現代社会においてはカッパは伝説上の生き物とされており、キュウリが好きで、相撲が得意で頭の皿にある水が無くなると弱体化してしまうとされている。これまで見たという証言はあっても、それを実証するような物的証拠は無い。ただ、500年前だったら存在していたのかもしれない。

UFOは存在するだろうか。UFOとは未確認飛行物体の略であるが、なんだか分からない物が空を飛んでいたらUFOと呼べなくも無い。しかし、UFOといえば多くの人が宇宙人の乗り物を連想するだろう。宇宙人は存在すると思うが、巷で映像化されているUFOは物理法則に反するから存在しないという意見もあるだろう。500年後も同じ事を議論している可能性もある。

ここで改めて「存在」について考えてみたい。空気は酸素や窒素などの物質の発見により存在が認められたと考えると、人の認識によって初めて存在したことになる。かつてカッパは多くの人が存在を認識していたものの、証拠が無いので架空の生き物とされてしまった。宇宙人の乗り物とされるUFOは信じる、信じないという個人の立場で存在の有無が分かれてしまうことになる。その「存在」は認識することによって存在し得る。

さて、クズリという生き物はあなたの中に「存在」しているだろうか。クズリは日本人にとっては馴染みの少ない生き物だろう。ただ、英語名であるウルヴァリン(Wolverine)と聞いてピンと来た人もいるかもしれない。アメリカンコミックのX-MENにウルヴァリンというキャラクターが登場するからである。クズリはヨーロッパ北部、ユーラシア大陸北部、そしてアメリカ大陸の北部に分布する。コミックに登場するくらいアメリカでは認知度が高いということだろうから、日本でいうカッパのような存在かもしれない。

ちなみに、クズリで論文検索をしてみると83件、Wolverineで検索してみると37,000件ヒットする。いかにクズリが外国、とりわけアメリカで認知度が高いかという証左ではないだろうか。それもそのはずクズリは極めて獰猛で、飼育下ではあるがホッキョクグマを仕留めた事があるとされている。森でクズリと出くわしたら死を覚悟しなければならない。そんな生き物に無関心でいられるはずはない。

クズリは哺乳綱食肉目イタチ科クズリ属クズリ。体長は65から105センチメートル、体重は7から30キログラムとイヌくらいの大きさである。タイガやツンドラといった寒冷樹林に生息するとされているが、岩場などにも生息する。夜行性とされているが、昼にも活動する。更には小型の動物を襲って食べるとされているが、死体や木の実なども食べることがある。このようにクズリは定まった生活様式を持たず、一人暮らしの大学生よろしく、とらえどころのない生活を送っているように見える。しかしながら寒冷地域に生息するクズリは生活場所、活動時間、食性などを臨機応変に変えていかなければ生き延びることが困難なのかもしれない。

このように、クズリからは獰猛なだけではなく、生活のためには食住を柔軟に変化させて生き延びるしたたかさを感じる。前段落で300字足らずの説明を読んだだけでもクズリについての認識を得た訳だが、世界には名前も知らないような生き物がまだまだ「存在」しているはずである。

500年前の空気のように、その存在を認識していなかったら存在していないと考えてしまうのも無理はない。地球上すべての生き物を認識するとは残念ながら不可能かもしれないが、存在の可能性を認識することでアマゾンの奥地にある小さな水たまりの縁にたたずむ派手な色のカエルのことを思ったり、真っ白な雪原にたたずむお腹をすかしたクズリのことを思ったりすることは可能である。

私はこの文章を書くことによって、できるだけ多くの人に生き物に対する認識を広げたいと考えている。認識されなければ環境問題も絶滅危惧種の問題も存在しない。時には人間社会に例えたり、小説風に表現してみたり、ダジャレを交えたりして、メジャーな生き物もマイナーな生き物もそれぞれが身近な存在として認識してもらえるとありがたいと思っている。ただし、一番の問題はこのエッセイがどれくらいの人に存在しているかということである。

(by ぐっちー)

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」の第43回「クズリ と関連した内容です。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。妄想旅ラジオは、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第43回「クズリ〜空気も、カッパも、UFOも、クズリも、あなたの中に存在しますか。」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当・ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

今日はダジャレがなかったですね……。さて、私も「クズリって何? えっ、ウルヴァリンのことなんだ、あ〜!(いやでもウルヴァリンて何者?)」と思ったクチです。クズリは妄想旅ラジオによって私の中に存在を与えられたと言ってよいでしょう。ちなみに「クズリ」という謎めいた語感を持つ名前がニヴフ語であることは、妄想旅ラジオ第43回「クズリ」のたまさんのお話のおかげで、クズリの存在とほぼ同時に知りました。詳しいことはそちらを是非聞いていただくとして、

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