Twitterでお話しました
みなさまこんにちは。
「妄想生き物紀行」編集担当、ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。
今回も、ポッドキャスター・ぐっちーさんのエッセイ「フナ〜大量に釣れたフナをどうやって保存するか夫婦喧嘩した結果、文化が生まれた。」を読んで、ぐっちーさんにあれこれお聞きしたもようを、お伝えいたします。
先週のぐっちーさんのエッセイをお読みいただくとより楽しめる内容です。
フナ減少・手間と暇・海水魚・冷蔵技術 この四つの共通点とは
エッセイで取り上げられていた鮒寿司。私は鮒寿司を食べたことがないので、食べたことのある方にお話を聞きたいものだと思っていたところ、ポチ子さんからコメントいただきました。
琵琶湖周辺に行くと鮒寿司が売られてますね。酸味と旨味があって、酒の肴によく合います。でも、高いな~と思っていたのですが、これだけ手間と時間がかかる上に、肝心のフナが減っているんじゃ仕方ないですね。美味しいもののため、文化継承に貢献するためにも財布の紐を緩めます。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 1, 2022
琵琶湖周辺で売られているのか〜(そして高いのか!) ポチ子さんのおっしゃる通り、フナが少ない、作るのが大変、では当然ですね。
で、美味しいんだな(そこが大事)、フムフム。酸味と旨味、発酵風味が強そうな感じです(味を想像中)
もうひとつ気になることがあったのでした。鮒寿司などのなれ鮨が酢飯で作った現代のいわゆる「お寿司」の先祖であるという話なのですが、子孫はどれほど変化しているものか?
鮒寿司美味しそうですね。酢飯で作った押し寿司と比べてどんなところが違うんでしょうか? あと、酢飯方式のお寿司を、もし鮒寿司などのなれずしの代替品と考えた時、再現度は高いですか?(再現性を基準に)ポチ子さんが採点するなら何点くらいでしょうか??😋
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 2, 2022
同姓同名の別人だと思った方がいいと思います。鮒寿司には生・フレッシュ感はありません。ご飯の姿はほぼ消えて、酸っぱい甘酒に化しています😵💫
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
やはり長期発酵の味をインスタントに再現できるものではないのですね。それで現在のお寿司が生まれたなら良しとしますが、鮒寿司系も(とりあえず私が食べるまでは)残って欲しい文化です。
風オーナーからも家庭での鮒寿司文化衰退を惜しむコメントが。
鮒寿司の作り方知りませんでした。裂かずに口から内臓を取り出す、やはり口からご飯を詰める、高度な技が使われているんですね。「最近はほとんど作られることがなくなった」残念です。#鮒寿司 #ゲンゴロウブナ #ヘラブナhttps://t.co/EbLgmzElbA
— 風木一人@ホテル暴風雨オーナー (@Kazeki_Kazuhito) March 2, 2022
口から内臓を出すって、そこだけ見ても大変そうです。それ用の特別な道具でもあったんでしょうか。しかも各家庭に? その方法にたどり着くまでのトライ&エラーも想像すると何というか……匂い立つ大変さ。
しかしニゴロブナではなくヘラブナで鮒寿司はできないのか、ヘラブナを食べないのはなぜなのか、も気になります。聞いてみます。
繊細かつワイルドな料理ですね。ところでぐっちーさん、「ヘラブナは水に返すことが多い」というのは、美味しくない、食用に向かないという理由ですか? 生息数を減らさないためのルールというか慣例的なものですか?
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 2, 2022
やはり現代では海の魚の方が美味しいので食べるよりも、釣る楽しみの方が優先するのだと思います
でも、鮒味噌食べてみたいですね— ぐっちー (@mousou_guccy) March 2, 2022
うーむ、やはりヘラブナはそんなに美味しくないということか。
鮒寿司という保存食が衰退する理由は「フナが減った」「作るのに手間がかかる」だけではなく「海水魚の方が美味しい」「保存食にしなくても冷蔵・冷凍すればよい」などがありそうです。敵は目に見えるよく似たライバルとは限らないという好例ですね。
(「鮒味噌」は後ほど登場します)
ポチ子さん、風オーナー、ありがとうございます!
フナ七変化(食文化編)
「鮒寿司」の感想求む!のぐっちーさんのツイートには、zuno/UdonAngya さんからこんな情報も寄せられました。
愛知・尾張周辺の伝統料理に鮒味噌があります。
鮒と大豆を甘辛く煮込んだ佃煮よりは水分多めのご飯のお供。公設市場の惣菜屋さんなど、ご高齢の購買者さん向けの販売かと思われます。最近、作ってみた的な記事がネットに流れてました。
魚感や鮒のお味は薄っすいですが、美味しいですよ。
— zuno/UdonAngya:ポッドキャスト、饂飩、北海道、青森、新潟、富山、徳島、宮崎、名古屋好き (@medama_yaki) March 1, 2022
鮒味噌? しかも鮒と味噌ではなく鮒と大豆を煮込む?(その後、発酵させるの?)
高齢者に人気?
いろいろ妄想が膨らんでしまいます。
ありがとうございます。鮒味噌、食べたことはありませんが、見たことはあります。フナの姿は見えず、赤味噌(豆味噌)の豆粒だけが印象に残ってます。
個人的に、フナには馴染みがありませんが、祖母の家が川に近かったのでモロコはよく食べました。今ではモロコもあまり獲れないかもしれませんね。— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 1, 2022
さすが、ポチ子さんはご存知でした。モロコというのがわからなかったのですが、こちらももとは琵琶湖の固有種である淡水魚のようです。へぇ〜!
スーパーで売っている鯛味噌と同じでしょうか?
子供の頃、ご飯に鯛味噌とバターを乗せて食べるのが好きでした— ぐっちー (@mousou_guccy) March 1, 2022
鯛味噌!? これまた知らない美味しそうな食べ物が登場しました。スーパーで売ってたっけな……今度見てみよう。
鯛味噌はペースト状ですよね?鮒味噌は粒の大きな粒あんみたいなものがかかっています。たぶんその下にフナがいるんだと思います。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
鯛味噌はペーストで鮒味噌はつぶつぶ。鮒味噌にはフナがいる(ということは鯛味噌にタイはいないのか)。全然違うものだったらしい!
これですか
丸々一匹いますねhttps://t.co/L8JxAJSlnO— ぐっちー (@mousou_guccy) March 2, 2022
おー、これが鮒味噌! レシピまで載っています。フナがあれば作れるというわけか。そしてリンク先の農林水産省のサイトには「長時間煮こむなど手間がかかるので家庭でつくることは減ってきているが、冬の味覚として食したいというニーズは高く、冬になるとスーパーマーケットなどで手軽に購入できる。」とあります。今も人気のある料理なのですね。
それです。
鮒味噌用の味噌があるのかと思ってましたが、大豆と一緒に赤味噌で炊くんですね。勉強になりました🤔— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
コメント時に見つけられなかった記事が見つかりました。「煮る前に焼く派」の作り方が載っています。https://t.co/Eyv95JjYdz
— zuno/UdonAngya:ポッドキャスト、饂飩、北海道、青森、新潟、富山、徳島、宮崎、名古屋好き (@medama_yaki) March 2, 2022
新たな情報が! 早速行ってみましたが、詳しくて読み応えのある記事でした。
こちらの本を参考にして作ったとあります。レシピが本にもなっているんですね。
上記記事からのまた引きですが、飯田辰彦著「あっぱれ! 日本のスローフード」の鮒味噌レシピは「いざこの料理を作ろうとした場合、相当の覚悟がいる」の一文から始まるとのこと。やっぱりね。でも覚悟の料理だけあって美味しそうです。赤味噌と大豆でじっくり煮詰めたためか臭みがなく、フナ独特の味わいを残した滋味のある料理だそうです。
かなり手間がかかるんですね。でもって、フナを釣るとこから!それなのに最後に白味噌入れちゃって。読みながら「ダメ〜」と叫んでしまいました。そして赤だしを入れた時には「よしよし」と頭を撫でてあげたい気分になりました。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
手に汗握る展開でしたね。
実はリンク先の「デイリーポータルZ」の玉置標本さんの記事は以前から他のものも何度か読んでいます。「狩猟採集&料理」系の記事がとても面白くて好きです。鮒味噌の記事の最後には、「鮒味噌はマロングラッセを上手に作るくらい大変な料理」だとか「作るのが大変だけど、七面鳥の丸焼きにも負けない達成感が感じられた」だとか書いてあります。とにかく色々作られている玉置さん認定・マロングラッセや七面鳥丸焼きと並ぶ料理だそうです!甘いけれど日本酒によく合うそうですよ。我こそはという方ぜひチャレンジを。
私も記事を読んでびっくり、すごく手間がかかるんですね! ポチ子さんは、もしフナが釣れて耳石をゲットした後はどう調理しますか? 鮒寿司か鮒味噌??😆❤️
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 2, 2022
断然鮒寿司です。味噌はあまり好きじゃないんです。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
鮒味噌作ったことがない理由が明らかに。ちょっと意外でした。鮒寿司は楽しみですね。
おお、鮒寿司漬けました! が聴けるのが楽しみです♪
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 2, 2022
みなさま、「鮒寿司漬けました」は、妄想旅ラジオのオープニングイメージで脳内再生してください。
そしてポチ子さんとのその後のやりとりで明らかになったのが……
赤味噌に限らず、どんな味噌でも。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
それは意外!!😯 味噌を使った料理全般もですか!?
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 2, 2022
はい。食べられないわけではないですが、好きじゃないんです。お味噌って塩っぱいじゃないですか。私、塩分があまり必要ない体質なんだと思います。
— ポチ子 (@mousou_pochiko) March 2, 2022
塩辛いものが苦手ということ。実は私もそうなので大いに親近感が湧きました。ポチ子さんのお住いの名古屋は赤味噌の本場、味は濃いめが好まれると聞いていますが、そんな中で味の好みがちょっと独特ゆえ美味しいお料理を研究されるようになったのかな〜と妄想。違うって素晴らしいですね。
zuno/UdonAngyaさん、ポチ子さん、ありがとうございます!
フナ七変化(形態編)
さて、フナは食べる魚というだけでなく観賞魚である「金魚」の先祖でもあります。
金魚といえば、前から気になっていたことをぐっちーさんに聞いてみました。
ぐっちーさん @mousou_guccy 、金魚はフナの子孫ですが、それが信じられないほど多様な色・形をしています。前から不思議でしたが、観賞魚や家畜などで同じ種の中にすごくバリエーションがあるものと少ないものがあります。犬と猫なら犬の方が体の大きさ、毛色、体の形の差が大きいです(続く)
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 3, 2022
ぐっちーさん @mousou_guccy 、金魚はフナの子孫ですが、それが信じられないほど多様な色・形をしています。前から不思議でしたが、観賞魚や家畜などで同じ種の中にすごくバリエーションがあるものと少ないものがあります。犬と猫なら犬の方が体の大きさ、毛色、体の形の差が大きいです(続く)
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 3, 2022
これ、不思議じゃないでしょうか?
犬種による違いは実に大きく、ゴールデンレトリバーとチワワなんて、ぱっと見同じ種とはまったく思えません。一方猫の方は、ちょっと姿が違っても猫は猫というか、何なら家猫とヤマネコ(など他の小型ネコ科)だってかなり似ています。大型ネコ科すら、大きさ以外は共通点が多いですよね。この違いって?
難しいですね
大きさだけをみても犬のバリエーションは多彩ですが、猫はほぼ同じ大きさです
どれくらいのバリエーションを許容するかは種によって違うかもしれません
金魚は許容範囲が広く世代間隔が短いので、その分人為的に変化させられるバリエーションも多くなる可能性が高いと思います— ぐっちー (@mousou_guccy) March 3, 2022
金魚はハッキリと世代間隔が短いぶん変化はしやすそうですね。世代間隔だけでなく、遺伝子的な許容範囲の違いもあるのかどうかは謎なんでしょうか。
トリフィドさんからもコメントをいただきました。
染色体の数(金魚100、犬78、猫38)が多い生物のほうが、変異を生み出すポテンシャルが高いのかなと思います
家畜は用途で育種されるので
遺伝的可能性×育種の歴史の長さ×用途の多様さ
=現在のバリエーション でしょうか1回に生まれる子供の数が多いのも
金魚は育種効率が高そうです— トリフィド【いさましいちびの博物愛好家】 (@tri_triffid) March 3, 2022
染色体の数! 思いつきもしませんでしたが、種によって大きなバラつきがあり、しかも生物としての複雑さとは無関係と言われる要素です。そこにまだ知られざる秘密があっても不思議ではないですね。
犬と猫では染色体の数は倍ほど違うのですね! 細胞分裂の時に現れる染色体という形状もミステリアスです……🧐染色体に加え、世代交代のスピードと子供の数、育種の歴史、そもそも多様であることを求められる観賞魚という点も考えると、金魚の種類が多いのは納得です!
— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 3, 2022
面白いですよね🐕🐈🧬
ゲノム(DNA塩基配列、染色体)の進化と、生物の形態の進化の関係は、すごくホットな話題だと思います
すこし長い動画(40分位)ですが↓
ゲノム進化と形態進化をどうつなげるか?:斎藤 成也 教授【遺伝研公開講演会2021】 https://t.co/QVlrXVcBpX
— トリフィド【いさましいちびの博物愛好家】 (@tri_triffid) March 3, 2022
この動画(実はまだ途中ですが)すごく面白そう。興味ある分野なので、こんな講演がyoutubeで見られるなんて嬉しい限りです。
ホットな話題なのですね。ということは、最新の研究で前からの疑問にあれこれ答えが出ている最中ということか〜✨
動画面白そうです! 見てみます😃🧐 ありがとうございます☺️— SAITO Ukyo (@ukyo_an) March 4, 2022
これもまた数年後には教科書が書き換わっているようなトピックなのかもしれないですね。ウォッチしがいがあるというもの。
トリフィドさん、どうもありがとうございます!
ページトップの絵ですが、フナについて調べて何枚もの写真を見るうちにフナがとてもきれいな魚だと気づきました。いわゆるふつうの「魚」という姿をした地味な魚だと思っていたのですが、フナを観賞魚として飼いたくなった人がいたから金魚が生まれたわけで、それも納得の魅力があるなと感じました。そんなフナの七変化イメージの絵です。
そのままの銀色でも、カラフルにしてもかわいいフナ。お寿司と金魚の祖先、偉大な魚です。
では今回はこれにて。
次回のエッセイのテーマは「タヌキ」です。タヌキが実は海外では珍獣、ということを初めて知ったのは妄想旅ラジオ第45回「タヌキ」ででした。懐かしい〜という方もまだ聴いたことがない方も、ぜひ聴いて予習してみてください。次回もどうぞお楽しみに!
ご意見・ご感想・ぐっちーさんへのメッセージは、こちらのコンタクトフォームからお待ちしております。