ジャイアントパンダ〜経済波及効果は３００億円は本当か？

日本にいるジャイアントパンダは全て中国からの借り物である。たとえ日本で生まれたジャイアントパンダであっても例外ではなく、いずれ中国へ返還される。そのレンタル料はオスメスのつがいで約１億円といわれている。ジャイアントパンダの飼育にはそれなりの設備と人員を確保しなければならないため、おそらくその１０倍は年間経費としてかかっていると推測される。

年間約１０億円をかけてジャイアントパンダを飼育したとしても、それを上回る経済効果が見込まれれば投資として成立する。２０２１年６月に上野動物園で生まれた双子のジャイアントパンダ、「シャオシャオ」と「レイレイ」による経済波及効果は３０８億円と推定されている。この効果の持続期間は不明だが、仮に３年程度継続したとしても年間１００億円の経済波及効果が見込まれる。ジャイアントパンダ飼育は非常に効果的な投資なのである。

ところが、この経済波及効果には少し疑問点もある。ジャイアントパンダの双子が生まれたからと言って単純に毎年１００億円の消費が増えているかといえば疑問符をつけざるを得ない。上野動物園に行ってジャイアントパンダのぬいぐるみを衝動買いしたとしても、その日の夕食はお茶漬けになっている可能性も大いにある。消費が拡大した分、縮小した部分もあるはずで、これらを相殺した金額が真の経済効果なのではないだろうか。

ということで、この経済波及効果について調べてみた。経済波及効果には「直接効果」、「一次波及効果」 、「二次波及効果」と３つの要素があるらしい。「直接効果」とは、ジャイアントパンダの双子を見るために上野動物園に行った交通費、入場料、昼食代、お土産代などが含まれる。我々がイメージしやすい直接の売上増加分が直接効果にあたるだろう。次に、「一次波及効果」とはジャイアントパンダの公開で上野動物園が警備員を雇ったとしたらその人件費や、ぬいぐるみが売れたらその原材料の仕入れ増加分が一次波及効果にあたる。続いて、「二次波及効果」は雇われた警備員が受け取った給料やぬいぐるみ販売量が増加したことによる関係者の収入増加分での消費を指す。これらを合算した数値が経済波及効果である。

これらの経済波及効果はプラスの効果しか試算されていない。ジャイアントパンダのぬいぐるみを手に入れたために夕食がお茶漬けと昨日の残りになってしまったマイナスの経済効果は考慮されていない。真の経済波及効果は、買うつもりもなかったぬいぐるみが、自分を見つめているような気がして思わず買って帰ってしまい、それにもかかわらず夕食はいつも通りとった場合のぬいぐるみ代金ということになる。夢の国に行くつもりだったが、子供がジャイアントパンダを見たいと駄々をこねたので上野動物園に行ったら安上がりになったという事態は考慮されていない。

とはいえ、プラスの経済効果を喧伝することで消費マインドを醸成して、景気回復の起爆剤にするために、このような発表がされると理解することもできる。中国側にとってはレンタル料をジャイアントパンダの繁殖保護に利用できて、かつ、友好ムードを醸成できる非常に有効なカードとなっている。一方で、日本側も友好ムードと消費拡大対策の両面で非常に有効な手段であり、中国と日本の互恵関係に寄与している。

現在、このレンタル料はジャイアントパンダの繁殖保護にのみ使用されているが、人気のない爬虫類などの別の生き物にも利用できる仕組みはできないものだろうか。日本に住む外国で人気の生き物をレンタルして、それ以外の資源保護に役立てることは可能ではないかと思う。アメリカの大リーグで高額年俸の選手を獲得したときに支払われる「ぜいたく税」の導入も可能だろう。

以前訪問したシンガポール動物園ではタヌキが展示されており、外国では意外と人気があると知った。近年では日本のアニメが人気らしいので、タヌキのアニメを作って海外に認知を図り、タヌキのレンタル料で他の絶滅危惧種の資源保護に役立ててはどうだろうか。きっと儲かると思う。取らぬ狸の皮算用ではあるが。

(by ぐっちー)