至福の晩餐

チヨ

こんにちは。客室係のチヨです。

私は「何でも好きな研究や発明をして良いから」と請われてここへやってきた……と若い人には言っておりますが、それは半分。ここだけの話、残り半分は、美味しい食事に惹かれたからです。前任のシェフも素晴らしければ、ジュロウシェフも素晴らしい!今日は当ホテルの食事の秘密を少しだけお話します。

先日のジュロウさんの説明通り、当ホテルでは動物性食材のすべてを合成して……いるのですが、実は植物性食材や菌(きのこ)の合成にもかなり力を入れております。

移動する島にあっては他所からの定期的な仕入れは困難ですし、ここの変わりやすい気候に合わないものは作れず、そもそも栽培のできないものも多い。だったら合成の技術を発達させた方が安定供給ができて環境への影響もなく合理的です。

お客様のお好みに合わせて、すでに地球にあるものに似せた食材を作ることも大切ですが、これまでにないもの、たとえばパイナップルとマンゴーの中間の味の果実や、マツタケよりももっと香りの良いきのこなどを作ることもでき、私はこちらにより大きな可能性を感じます。命あるもの、本能やら因習やらに囚われ過ぎれば争うばかりで不幸になるのがことわり……それに、同じものを千年も食べているとさすがに飽きてまいりますのでね。

至福の晩餐

至福の晩餐illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

しかし、ジュロウシェフには合成食材を作るのは「とても大変だから原則、動物性のみ」としか話しておりません。

実は、ちょっとした縁あってジュロウさんを子供時代から知っております。彼の種族も長命ゆえ昔の話ですが、当時から変わらず、夢中になると他が見えなくなる性分なのです。あの食いしん坊のジュロウさんが食材の合成に熱中した日には、料理そっちのけになりそうで困ります。みなさまもこの件どうかご内密に。いえいえ、決してこの楽しみを独り占めしようというわけではありませんよ。

この3種のきのこだけは、「私が50年の歳月をかけて合成に成功し、門外不出としていたものを公開した」ことになっております。本当は去年思いついて作ってみたのですがね。美味しいんですから誰も文句は言いますまい。私の好物でもあり、お客様やスタッフからも大好評のきのこなのです。

みなさまもホテル暴風雨へお越しの際はぜひご賞味くださいませ。

チヨでした。

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