『びりびり』白と黒。コントラストの極。原初的でいて洗練された形のよろこび。

びりびり 東君平

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『びりびり』(東君平・作 ビリケン出版)

「いちまいの くろいかみを びりびり やぶいていたら へんなどうぶつが うまれました。びりびりという なまえを つけてあげたら ひとりで あるきだしました。」

なんとも人を食った出だしです。びりびりはぼくの時計を食べてしまいます。取り返そうと二つに裂くと(紙の動物ですからね)、それぞれがまたミニびりびりとなって歩きだします。雨靴を食べ、ボタンを食べ、そのたび裂くと更に増殖、「みんなでトコトコ 大行進」。

「こらビリビリ そらビリビリ」
この繰り返しを声に出して読んでいくと、強烈なリズムが生まれてきます。奇妙にユーモラスなびりびりたちが、白い画面の上を動きだします。

2000年の出版ですが、東君平さんは1986年に亡くなられています。本の最後を見ると、1964年、作者が24歳のとき至光社から出た絵本を再構成した、と書いてあります。

50年以上前にこんな絵本が作られていたとは。白黒二色、絵も文もギリギリまでそぎ落とした作家の美意識は、今なお鮮烈です。

山梨県小淵沢にある「くんぺい童話館」は東君平さんの個人美術館。ぼくは一度だけ訪ねたことがあります。さわやかな高原の風が吹き抜ける、初めてなのに懐かしいような場所でした。また行きたい。

(by 風木一人)


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