空間に絵を描く魔法
3Dペンというものをご存知だろうか。
ペン先から細い針金のようなものが出てきて、空間に自由に絵を描けるという魔法のような道具だ。
見た瞬間から興味があったのだが、きっと思い通りに空間に絵を描くには熟練が必要だろうし、好奇心を満たすためだけの買い物としては高額すぎたので「ふーん面白いな」と頭を通過して行っただけだった。
ところが近年、いろいろなメーカーがこの市場に参入し、手頃なものが増えている。
調べてみると、大別して、
*UVやLEDで硬化する樹脂のチューブを絞り出しながら、ペン先についたライトで即座に固めるというタイプ
*3Dプリンタにも使われるプラスチックの棒(フィラメント)を熱で溶かしながらペン先から出し、室温で冷めると同時に固まるタイプ
の二系統があるらしい。フィラメントの方に興味を覚え、頻繁に販売サイトを物色していたら、手頃な価格のものがさらにタイムセールで安くなっていたので購入してしまった。これだ。
そもそも3Dペンで何をしたかったというと、盆栽フクロウ遊びに使いたかったのだ。
上の記事にも書いたように、ドールハウスや建築模型などが大好きだが工作にも立体造形にマイナス方面に群を抜いた才能を誇る私である。紙に描いた絵を切り抜いて満足していた。
が、すぐに満足できなくなってきた。立体まではいかなくていい。「厚み」「奥行き」のある世界が作りたい。3Dペンならば「平面描画」的な感覚でそういうのが作れないかと思ったのだ。
ペンだけではなくフィラメントも必要なので、いろいろな色が少しずつ入ったセットを注文した。
3Dペン、修行中
これが届いた3Dペンだ。下に敷いてある紙が汚いのは3dペンではなく私の部屋の仕様だ。ペンの後ろ側に電源コードを入れてスイッチオン、写真だと見にくいが電源コードの隣にフィラメントが入る穴があり、そこから使いたい色のフィラメントを入れ、ペン先が暖まるのを待つ。
暖まったら、フィラメントを送るボタンを押してスタートだ。極端にツルツルしていない平らな場所の上ならばどこでも描ける。紙を敷くと紙の上に描いた下書き通りになぞればいいので簡単だ。だが薄い紙だとフィラメントが固まり切る前に熱で反ってきてしまい、出来上がりの裏面が平坦にならないので注意が必要。木の板の上が一番やりやすかった。木の板でも紙でも、出来上がった後はわりと簡単にはがすことができる。逆に平面にしっかりくっつけたい場合は、後から接着剤を使った方が良さそうだ。
写真は青いフィラメントで作った虫。これでもわりと上達してから作ったものだ。
思った通り作るのはなかなか難しく、特に立体的なものを作ろうとすると困難を極めた。フィラメントを送る速度を調整できるタイプを選んだのだが、あまり微妙な調整ができない。予想通り、「空中に線を引く」のは難しい。設計図を通り、平面のパーツを作ってから後で組み立てた方が良さそうなのだが、組み立て時に同じ色のフィラメントで溶接しようとするも、思い通りの角度できれいにつけるのも思いの外難しい。
紙で作った円筒や円錐、小物やお菓子を覆っている透明プラスチックのパッケージ、飴の入っていた缶、粘土で作った立体を土台にするなどの方法も試してみた。この方法なら、出来上がった立体の上に描けば良いので、形が歪む心配はないはずだ。
結果、紙で作った立体を土台にするのはなかなか良かった。手で持ってもへしゃげない形のものでないと作っているうちに歪んでくるので形がある程度限られてくる。パッケージは、熱で変形さえしなければうまくいくが、変形するかはプラスチックの種類によって違うようで、やってみないとわからない。缶は変形も少なくなかなか良いが、薄い円筒や直方体など形が限られているのが難点。粘土は、意外と表面でフィラメントが滑ってしまい難しいが改善の価値はありそうだ。しかし元々立体造形の才能がマイナス方面に抜きん出ている私のこと、3dペンの土台のためだから精密なものではないとはいえ、立体を自作するには限度がある。やはり平面で作って後から奥行きを出す工夫も引き続き追求したい。
……などなどと試していたら、瞬く間に溢れかえるほどのゴミ 作品ができた。写真はこれでもほんの一部分だ。周辺が散らかっているのは仕様である。
一体こんなものを作って何をしたいのかというと、こういうことがしたかったのだ。盆栽フクロウの家のパーツを3Dペン(と紙)で作ってみた。
立体までは行かないが、「奥行き」「厚み」「前後関係」「影が落ちる」などの要素が加わり、紙を切って並べただけの時より楽しい感じになって大いに満足している。
この3Dペン、すごく面白いアイテムだと思うのだが、検索しても思ったほど情報が出てこない。amazonなどの販売サイトのレビューも「子供に買ってあげた」という事例が多いようだ。子供でも老人でも異界人でも別にいいのだが、3dペン仲間がいたら情報交換してもっと楽しく遊びたいなあと思う今日この頃なのです。
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