前回は、伝統的な家の墓を守る人たちの他に、最近は自分用の墓を新たに作ったり、記念碑を立てる人もいると言う話をした。
当今はやりの自伝の出版も、自分用の墓や記念碑の建立と同じように捉えられないか。
この場合は、記念碑や墓のように物理的に固い物体ではないが、多数のコピーを世に送り出すことによって、後世に残すことが出来る。場合によっては国会図書館でも保存してくれるかもしれない。
印刷技術が発達、普及した現代においては、ある意味では石に文字を刻むよりもより確実にメッセージを後世に伝える方法である。 そして、後世の人が読めば、墓石の文面よりは遥かに多くの自分についての情報を伝えることが出来る。
後世の人たちが自分について知ってくれると考えることは、後世との一体感を感じることに役立つだろう。
最近、新聞等でも「自分史を出版しませんか」という類いの広告が目につくようになった。実際のところはどうなっているか、少しネット上を調べてみた。
なかなか良い資料に行き当たらなかったが、個人のブログで自費出版の点数を調べているものがあった。それによると、自費出版大手3社の出版点数は、1999年には833点、2000年には1545点、2005年には4599点となっている。http://d.hatena.ne.jp/myrmecoleon/20070716/1184582057
このうちの何割が自伝かはわからないが、自伝の出版数も、同様に増加していると考えてもそれほど無理は無いであろう。
ただし、出版物の場合、後世に残ると言う「縦」のつながりばかりでなく、同時代の多くの人に読んでもらえると言う「横」のつながりも重要だろう。
とくに若い人の場合は、より「横」のつながりが重要と思われるが、本稿では、自分より後の世代に何かを残すという「縦」の繋がりに注目しておきたい。
(つづく)
おまけ
この原稿を書いている間に、毎日新聞の「毎日フォーラム・牧太郎の信じよう!復活日本」と言う連載に、「遍路、永代供養、樹木葬がブーム?」というタイトルの記事が出た。
自分と同じような問題意識を持った人がいるのだなあと、少し嬉しくなった。
ちなみに著者の牧太郎氏は、実際にご自分が癌になり、死を意識されたとのことだから、非常に切実な問題であろう。しかし、タイトルに「?」が入っているということは、新聞記者の力をもっても、正確なデータは集められなかったということだろうか。ご参考までにURLは以下の通り。
http://mainichi.jp/articles/20160804/org/00m/010/021000c
なお、樹木葬については、第一生命保険 研究開発室の小谷みどり氏が意識調査の結果を公表している。これについては、本連載でも後日取り上げるつもりである。