講談社サイエンティフィク 矢吹俊吉社長第1回

9月の社長インタビューは講談社サイエンティフィクの矢吹俊吉社長です。講談社サイエンティフィクは理系専門書の出版社ですが、今回は講談社の部長時代に手がけられた思い出深いベストセラーの話からうかがいます。


『聖の青春』のこと
矢吹俊吉社長 講談社野間道場

講談社野間道場にて

「社長といっても私は講談社のグループ会社の社長ですから。
自分で創業された方や、大会社で競争を勝ち抜いて社長になった方とは全然違います。
りっぱな話、ためになる話などできませんが、風木さん(インタビュアー)とは将棋友達でもあることだし、雑談でよろしければと出てまいりました」

ありがとうございます。将棋といえばタイムリーな話題がありまして、編集を担当された本『聖の青春』が映画化されますね?(注1)

「単行本が出たのは2000年だからずいぶん昔の話ですが、今も読まれ、こうした展開があるのは嬉しいことです。

先日、試写を観せていただきました。主人公村山聖(さとし)役の松山ケンイチさん、ライバル羽生善治役の東出昌大さんをはじめ将棋シーンの作りこみがとにかく凄くて、ここまでやるのかと感じ入りました。本物のプロ棋士にしか見えませんよ。

全体としては、本が村山さんの29年の生涯を描いたのに対して、映画は羽生さんとのライバル物語に焦点を当てた印象でしたね。

『聖の青春』はテレビドラマ化されたこともあって、そのとき私はチョイ役で出演しています。故森安秀光九段の役でした」(注2)

関西の雄、名人戦にも登場した名棋士じゃないですか!

「アマチュア初段の私がプロの九段を演じるわけです。あんなことは二度とありませんね(笑)。

あの本を作ったころ、私は講談社のノンフィクション書籍の部長でした。後輩社員のY君から紹介されたのが当時将棋専門誌の編集長をされていた大崎善生さんです。

大崎さんからお聞きした村山さんの企画はとても魅力的で、これは自分で担当しようと。

発売されたとき、村山さんのご両親ともお会いしました。ご自宅で少年時代の村山さんが使っていたプラスティックの将棋駒を見せてもらったんですが、厚みが半分になってるんですよ。すりへって。プラ駒どんなに使っても半分にならないですよ。普通に考えたら。

感に堪えずぼーっとしてたら村山さんのお父さんが「それ、さしあげましょうか?」っておっしゃって。いや、もらえないでしょ(笑)。凄いものを見たと思いました。

タイトルは迷いましたね。山ほど考えて決め切れず、Y君と酒を飲みながら「これはもう、うんと単純なのがいいんじゃないか」と、例えばで口を出たのが『聖の青春』でした。

村山さんの将棋の師匠、森信雄七段の奥様も気に入ってくれたんです。「横棒が多くてきれい」って(笑)。※森信雄七段インタビュー(別記事)へ

内容がとてもいいから3万部はいくであろうと。もし10万部売れるようならタイトルも良かったということだろうと思っていたら、実際はもっともっと売れました。
自分の作った単行本では一番売れたんじゃないかな」

『聖の青春』、類まれな青春の記録として将棋ファン以外にもぜひ読んでもらいたい本ですね。映画公開も楽しみです。

聖の青春 大崎善生 講談社文庫

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矢吹社長インタビュー、9月12日(月)更新の第2回へと続きます。

注1(『聖の青春』(大崎善生著)は早逝した天才棋士村山聖九段の伝記。同名映画は11月19日公開) 映画公式サイトへ
注2(TBS系列で2001年全国放送。このときの主人公役は藤原竜也)


矢吹俊吉(やぶきしゅんきち)
1954年、茨城県土浦市生まれ。12歳のとき初めて竹刀を握り、中学、高校、大学と剣道三昧ですごす。1977年、講談社入社。校閲局を経て月刊「現代」編集部に異動。1992年~96年、同誌編集長。その後、現代新書、ノンフィクション書籍の出版部長、ランダムハウス講談社編集局長、講談社学芸局長を経て、2012年より現職。1994年、ルポライター小林篤さんの誘いにより将棋を指し始め、2003年、将棋のご縁で「ホテル暴風雨」オーナーと出会う。


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