…………………………
人類を滅ぼすものはなにか。それは宇宙人の襲来でも巨大隕石の地球衝突でもなく、自然災害でも気候変動でもないような気がしてならない。「人類を滅ぼすものは、人類が(よかれと信じて)生み出した道具」ではないだろうか。そんな気がする。原発がそうであり、すでにサイバー上に誕生し人類が察知できない世界で知覚や感情を獲得しつつあると噂されている人工知能にもその危険性が大きい。
しかしここではそうした人類滅亡談をしたいのではない。もっと身近なところで、「どうもこの利器は気になる。魔がひそんでいるような気がする」と思うような道具が、我々の日常生活に次第に増えているのではないだろうか。
それらはボディブローのように我々の健康や精神にじわじわと害を及ぼしつつある。一部の良識ある人々がそうした危険性を発見する。しかしすでにそれを商品化し、莫大な資金を投じて大量生産し、相応の利益を上げつつある企業にとってその情報は「寝耳に水」だ。売れ筋商品のイメージダウンは会社にとって衝撃だ。
「社運がかかっている」という命令のもとに彼らは全力でその「もみ消し」に奔走する。事実は社運どころか人類運がかかっているのだが、ことの重大さに気がつかない。「人類よりも会社」と言わんばかりだ。LED光源を熱帯魚の水槽に使ったら「全滅した」「熱帯魚の背骨が曲がった」「水草が全部枯れた」という気持ちの悪い話が出てきても「その原因をLEDに特定することはできない」と回答する。色々な噂はすべて「根拠のない都市伝説」で片付け、全く相手にしていないような平然たる態度をとる。しかしその裏では自分の家族には密かに「これを子供部屋で使ってはいけない」(筆者執筆中の小説シーン)などと伝えていたりしているのではないだろうか。
…………………………………………………**
LEDはもちろん善意の科学者によって開発された光源である。なにしろフィラメントを使わないので、従来の電球よりもシンプルな構造である。大量生産しやすい。したがって(現状では高い価格だが)安価になる日は近い。
「超寿命/半永久/省電力」というコピーが踊り、故障の発生する割合も少ない。時代の先端技術が生んだすばらしい照明であるかのように宣伝され、大量生産されている。街では店舗照明だけでなく信号から車のライトに至るまでLEDが進出し、家庭にもどんどん入りこんできている。開発されてまだ数年であるにもかかわらず「理論的には10年間の使用に耐えるハズ」というなんの根拠もない机上の想定だけで、「10年間保証!」という文字がデカデカと大きく踊ったパッケージが家電ストアの店頭にズラッと並んでいる。一般大衆はそれを見て(中国産ではなく日本の大手メーカー産であることをチラッと確認し)、右から左に全面的に信用する。
「まあ、10年間ももつのなら、ことし小学校に入学したウチの子が高校に入学するまで、このLED1個でいけるのね。少々高くても結局はお得ね!」と主婦は飛びつく。かくしてLEDは家庭内の少年少女にまで接近しつつある。
しかしLEDには隠された一面がある。いや「隠された」というよりは「問題視されていない」と言った方がより正確かもしれない。じつはLEDにはふたつの大きな問題がある。「ブルーライト問題」と「点滅問題」である。つまりLEDはブルーライトを発し、高速で点滅しているのだ。ブルーライトも高速点滅も「目に見えない」という点で共通している。そこに魔が潜んでいる。現状ではまったく危険視されていない。
こんな話がある。キュリー夫人(ノーベル賞受賞科学者)はラジウム(放射性物資)を素手で触っていた。その危険性がまったくわかっていない時代だったからだ。その結果、彼女は晩年になって手が動かなくなった。
子供に魔が迫っているように思えてならない。超寿命・省エネと聞いてLED電球を家庭に持ちこみ、「ウチの子はもうスマホが使える」と言って喜んでいるママ、その子が大人になった時にどんな障害が出てくるのか、誰にもわからないような時代に我々は暮らしていることを急ぎ伝えたい。
ママは「そんなバカな」と笑うだろうか。「ポケモンショック」と呼ばれた事件を思い出していただきたい。
1997年12月16日。テレビアニメ「ポケットモンスター」を見ていた人が急激な体調不良となり、発作、頭痛、吐き気などで病院に搬送された。その数、日本全国で750人。入院患者135人。そのほとんどが子供だった。この事件は「ポケモンショック」と呼ばれた。
アニメ制作会社はいったい画面にどんな仕掛けをしたのか。赤と青の画面を1秒間に24回、切り替えたのだ。それをたった4.5秒見ていただけで、750人(実際には軽度も含めるともっと多数だったと報じられている)もの人をノックダウンしたのだ。点滅が人体にいかに悪影響を与えるか、明白ではないだろうか。
もちろんこのアニメを制作した関係者は悪意に満ちていたわけではない。彼らはただ「ちょっとインパクトのある画面にしたいねえ。スパークシーンなんだし。こんなのどう?」という軽い気持ちでやってしまったのだろう。まさかこんな事態になるとは想像もしていなかったのだろう。……とはいえ、人為的にやったのだ。アニメ画面に(まったく余計な)仕掛けを盛りこんだのだ。責任の所在もはっきりしている。
LEDの点滅はそうではない。明るく華やかな光の合間合間に隠された無数の暗闇。まさに「最先端の魔」ではないだろうか。
・・・・・・・・・・・・・・・・…( つづく )