【 魔の記憶 】(6)

ふと聞いてみたくなったことを、そのままぶつけてみた。

「過去生、知ってるのか?」
「少しは」
「覚えてたのか?」
「全然ダメ」
「……じゃあ、どうしてわかった?」
「催眠術」
「!……なるほど。そういう手もあるのか」

それはアメリカで行われたらしい。黒ユリが懇願し、黒キノコと黒ボブが付き添いで、3人で催眠術師のところに行ったという。

「そうまでして知りたいもんかね?」
「悲しいお話が聞けそうな気がして」
「悲しいお話!……覚えてんじゃん!」
「なんとなく」
「なんだかなあ。……大泣きしたいと思って、ハンカチを握りしめて、悲劇の映画を観に行くようなもんかね」
「なにも残っていないかもしれないけどね」
「その催眠術師は大丈夫なんだろうな」
「それは大丈夫」

その世界では有名な催眠術師(女性)で、FBIから内々で調査依頼を受けることもあるという。

「FBI!……まさにXファイルだな。容疑者を催眠術にでもかけるのか?」
「まさか。オーラの追跡よ」
「オーラの追跡!……FBIはオーラを信じてるのか?」
「さあね。とにかくなにか新しい手がかりが出てくれば、その時点で信じるんじゃない?」
「なるほど」

…………………………………

その催眠術師の誘導により、過去をじわじわと慎重にさかのぼって行くやり方で、生まれる前の闇の世界に入ろうとしたらしい。ところが……

「ものすごく苦しくなったの」

彼女は嘔吐して床に転がり、苦しみ始めた。そのあまりの暴れように、居合わせた3人の女性は必死になって彼女を押さえつけたという。

「すさまじい話だな。……で、なんかわかったのか?」
「たぶん溺れたのだろうと」
「ああなるほど。そりゃ苦しいわけだ」

催眠術師の話によれば、前世の記憶は、殺人、事故死、水死など非業の死で人生を終えてしまった事例がほとんどらしい。「こんなことで死にたくなかった」とか「いやだ!……ここで死にたくない!」といった悲惨な前世記憶が事例として多数報告されている。逆に平凡で幸福だった前世の記憶事例は、全くと言っていいほど見つかっていないという。

「なんだかなあ。まさに〈救いのない話〉だ。結果、死んじゃったわけだし」
「でも同情はできる。私は同情したわ。心から〈かわいそうに〉って、思ったよ」

彼女が言いたいことが、少しはわかったような気がした。仮に自分の中になんの痕跡がなくとも、過去生を信じるがゆえに、その人の非業の死に心から同情する。「かわいそうに」と思う。そう思うことで、自分の中のなにかが慰められるような気がするという。

……………………………………   【 つづく 】

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