「Confession of Love」試し読み~『五つの色の物語』(ホテル暴風雨絵画文芸部)より~

明けましておめでとうございます。
漂着した大量のチョコレート・パイ」、略して「漂チョコ」を連載をさせていただいていた、イラストレーターの松沢タカコと申します。
さて実は私、ホテル暴風雨内にて、小説も書くイラストレーター五人が集まってできた部活「絵画文芸部」に所属させていただいておりまして。
現在休載中であるにも関わらず、厚かましくもこうしてご挨拶させていただけるのは、私が部員であるためにほかなりません。
2019年に1冊目の「エブン共和国〜幻惑のグルメ読本〜」を、そして2020年2冊目「五つの色の物語」を刊行した絵画文芸部。
一人でも多くの方に作品をご覧いただきたく、それぞれ冒頭部分を掲載する運びとなりました。

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今回私の書いた小説、タイトルは「Confession of Love」。
直訳すると「愛の告白」です。
なんだかやたらと理屈っぽいメールのやり取りから始まるこの物語。
「愛の告白」とは程遠い感じですが、はてさて。

それでは、どうぞ。


「Confession of Love」 松沢タカコ

〈 to : A 〉

平仮名をひとつの王国と仮定し、一文字が一人の人間だと考えてみた。  「あ」が王であることに異存はないだろう? なにしろ母音だし五十音のトップだ。他は考えられないよね(「いろは」のことは忘れて。あれは雑然としていて今回の話題には相応しくない)。

で、同じ行の「い」「う」「え」「お」をその家族とし、「い」は妃、「う」「え」「お」は子供達ということにする(男女同権の意識が高まる昨今において、王が男で家長、その次が妃で女という決めつけは心苦しいし、子供が三人も居るというのは、今どき一般的でないのは承知の上だけど、法則を作らないと話が進まないので、気になるだろうけどスルーしてほしい)。これを各行に当て嵌めると、平仮名王国には「あ」一家から「わ」一家まで十戸の家庭が出来ることになる(ひとまず「ん」は除く)。

「あいうえお」一家が王家であるなら、続く「かきくけこ」一家は一番近しいが故に王家に次ぐ上流階級である、という展開もそんなに無理はないはずだ。なので「あ→か→さ→た→な→は→ま→や→ら→わ」の順番で庶民になるとする。するとつまり最下層は「わ」家ということになる。

周知の通り、五十音は五十文字ではなく、「やゆよ」は、い段とえ段、「わを」は、い・う・え段が、それぞれ欠落している(それにどこにも属さない「ん」を加え、全部で四十六文字しかない。全くどの面下げて五十音なんて言うんだか)。よって「わ」家には「わ」と「を」しか居ない。つまり「わ」家は、最下層の家庭であると同時に、父と幼子の二人暮らしということだ。きっと病弱だった妻は三人も子供を産んだところで力尽きて亡くなり、妻に似た上の二人の子供も病に倒れ、けれども貧乏故に医者に診てもらうことも叶わず、幼くして亡くなったに違いない。「あ」家なんて、庶民から搾り取った税金で毎晩パーティー三昧に違いないのに。

斯様に集団があれば、相対的に幸福な者と不幸な者が存在してしまうのは必然なのか。なんてことを考えていたら、なんだか気が塞いでしまった。

〈 to : I 〉

思いこみが激しくて、とりとめも突拍子もなく、やたらと注釈が多いメッセージをどうもありがとう。とてもあなたらしい。

ーーーーー続く

続きは『五つの色の物語』(ホテル暴風雨絵画文芸部)でご覧ください。

『五つの色の物語』について、他の収録作品など詳しくはこちらのページを。

『五つの色の物語』収録の他の作品の試し読みページは↓こちら↓です!(順次掲載予定)

<赤の物語>芳納珪 / 服部奈々子作 「塑界の森」

<黄の物語>浅羽容子作 「サスキ氏の黄色い一日」

<緑の物語>クレーン謙作 「緑色のあいつ」

<青の物語>斎藤雨梟作 「はじめの青い海」

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