ミャンマー人、ビルマの映画・・「在日ミャンマー人 わたしたちの自由」「ビルマの竪琴」

「在日ミャンマー人 わたしたちの自由」は、上映時間170分、料金もシニア1800円。この映画は長さだけでなく、興味深いことが沢山盛り込まれた中身の濃い秀作であった。ミャンマーのことは、実はあまりよく理解してない、在日ミャンマー人に至っては全く何も知らない自分だが、ガーンと来るような衝撃を感じ無知を恥ずかしく思った。

「在日ミャンマー人 わたしたちの自由」監督:土井敏邦

「在日ミャンマー人 わたしたちの自由」監督:土井敏邦

ミャンマーはアウンサン・スーチー氏が選挙で大統領になったものの、丁度5年前の2021年2月の軍事クーデターで軍人ミン・アウン・フラインが政権を支配している。知らなかったが、反対し抗議行動を行った者は3000人も殺され、350万もの国内難民がいる、とのことだ。この難民は森に隠れ、収入もなく子供も教育が受けられない状況だ。

この映画は大きく3つに分かれるが、第一部は在日ミャンマー人の証言ドキュメンタリーである。日本で生活する人たちが祖国の民主化を支援するため、募金活動を行ったり、デモを行ったりする様子が描かれる。第二部は、主に、タイとの国境でミャンマー人のために建てた寄宿生の学校で子供たちを教育する様子や、政府に反対する元医者や警察官の行動を描く。第3部では、日本とミャンマーの関わり合いを批判する。

第一部で一番心打たれたのは、ミャンマー人の心性を表す言葉「ハピラタ」の実践である。「ハピラタ」とは利他主義のこと。自分の幸福よりも皆の幸福を考えるのだ。その実践として何と、在日のミャンマー人が東北の震災の時に、炊き出しのボランティアに行かれていることを知った。

第2部は、教員の端くれだった私は胸が詰まる思いだった。親が殺された、あるいは親と離れ離れになった子供たちを沢山集めて、国境で、学校を運営し続けているのである。ビルマ語の授業、そして英語の授業風景などが映る。下の歯が何本か抜けている庶民的な校長がリーダーである。彼が、食料が不足している山奥の場所へ食料を車で運ぶシーンもジンと来た。

第3部では、ええっと思う事実が羅列されてゆく。日本政府は軍事政権を承認していないとはいえ、ODAなどの援助を続け、その金によってミャンマーでコングロマリットが形成され、軍の関係者が潤っているのである。

ミャンマー人の中には、日本に来た理由を日本が民主国家だから憧れて来た、と話す人もいる。(日本は太平洋戦争中ビルマを支配したにもかかわらずだ)。そういう人たちに、我々は応えてあげられているだろうかと思う。
心貧しき「自分たちファースト」や「排他主義」に向かおうとしている日本。(「移民反対」と言う時、欧米人は眼中になく、アジア人だけが頭にないだろうか。彼らを下に見ていないだろうか)。無論、日本も暗いことが多く不安はあるが、「利己」でなく、「ハピラタ」で行こうとするミャンマー人の方が人として素晴らしいのではないかと思えてくる。

監督は土井敏邦。7年前の「福島を語る」という映画にも感銘を受けている。原発避難者10名程の証言をジッと聴き取る映画だった。何か作為を仕掛けたりして面白いドキュメントにしようとするのもいいが、「記録する」という目的で、じっと対象の声に耳を傾ける作り方もいいのではなかろうか。

監督:市川崑 出演:三國連太郎 伊藤雄之 安井昌二ほか

監督:市川崑 出演:三國連太郎 伊藤雄之 安井昌二ほか

ミャンマーは、元はビルマと言っていた。ビルマを舞台にした日本の戦争映画の秀作は1956年(昭和31)の「ビルマの竪琴」(市川崑監督)である。
太平洋戦争中、日本はアジア解放を口実としてビルマに進軍しイギリス軍と戦った。その戦いに従事した水島上等兵(安井昌二)は、終戦後も帰国することなくビルマに残り、日本軍やイギリス軍の死んでしまった兵士を弔う放浪を一人で続けて行く。水島は頭を剃りオウムを肩に載せ、僧侶の身なりになっている。肩から竪琴を下げていた。

忘れられないシーンがある。夜、日本軍とイギリス軍の小隊がジャングルでにらみ合いを続ける中、イギリスの兵士が故郷を偲んで「ホーム・スイート・ホーム」を唄い出す。すると、同じメロディの日本語の「埴生の宿」を日本兵が歌い返すのである。その時、一瞬ではあるが、敵味方を超えて、望郷の念と友愛の念が生まれる。
最前線の兵士たちに戦争の罪はない。本当は、殺し合いなどしたくなく、故郷の家族を大事にして平和に生きたいのだ。国は違えど想いは同じだ。戦争の理不尽さの中で、同じ人間同士だと唄でメッセージを伝えあう人間愛が溢れるいいシーンだった。

(by 新村豊三)

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