ほとんど宣伝されず、ノーマークだったが、九州の映画仲間から面白いですよと勧められて見た日本映画「万事快調〈オール・グリーンズ〉」と、中国映画「長安のライチ」がぶっ飛ぶような面白映画、快作であった。この2本、絶対のお勧め映画。

監督:児山隆 出演:南沙良 出口夏希 吉田美月喜ほか
まず、「万事快調〈オール・グリーンズ〉」。大学生が書いた小説が原作で、女子高生が活躍する痛快青春映画。舞台は茨城県東海村。落ちこぼれ高校の3人の女子高生が、金儲けのために、校舎の屋上で「あるもの」を栽培し始める。学校の施設が使える同好会の形にして作業着まで揃える。グループ名は「オール・グリーンズ」だ。
3人の女の子とは南沙良扮する朴秀美。この子は名前からしてコリーアン系のようで、心安らぐ家庭ではない。朴はラップ仲間に加わってラップを始める。
次に出口夏樹扮する矢口美流紅。この子は映画通でゴダールの名などを口に出し、近くの名画座に行ったりする。名前は、以前ショーン・ペン主演で映画化された「ミルク」(2008年)の名に依っている。ミルクとは同性愛のために闘った実在の政治家だ。
そして吉田美月喜扮する漫画家志望の岩隈真子。ちょっと不愛想な子だ。これに坊主頭の二人の男子高校生が加わる(この二人の設定も面白いが、あえて伏せる)。
女の子は家庭的に恵まれてはいない。かつ、周囲は原発の東海村で何にもないところでドロッとした雰囲気が出ている。しかし3人はそれを打開すべく元気なのだ。バスに乗ってビジネスの為に渋谷に行き、そこで現実の犯罪組織の怖さを知ったりする。
ラストの盛り上がりは、もうよくぞこんなことを考え付いたとビックリするような展開。元学校のセンセイだった私も、もう参りましたのチョー面白の映画的アイデアで大爆笑だった。
ユーモアセンスもあり、大いに笑える。見た人で、あそこは面白かった、ここはケッサクだったと話して大いに盛り上がる映画だと思う。新宿の劇場も平日の昼間だったがかなりの観客が入っていた。一押しの日本映画だ。脚本・監督は児山隆。

監督:ダー・ポン 出演:ダー・ポン テレンス・ラウ アンディ・ラウ他
次は中国映画「長安のライチ」。「長安のライチ」のことは聞いたことが無い方が多いだろうが、中国史をかじった方だったら、唐の時代、玄宗皇帝が愛する楊貴妃の好物のライチを、誕生日のお祝いとして長い距離を運んだ伝説をご存知だろう。
宣伝が少なく(チラシもイマイチの出来)話題になってないからこそ、この映画を応援したい。誕生日に合わせて、2000キロ離れた嶺南から長安(今の西安)に運ぶミッションを受けてしまった下級役人李善徳の奮闘ドラマ。
生のライチが新鮮なままで数日で長安に届くわけがなく、李は上司に騙されたのである。しかし、家のローンもあり、李は「ライチ使」となって嶺南へ向かう。そこで、ライチを背負った馬の走るコースやライチの保存の仕方を変えながら、テストを行い研究していく。
元々、李は経理の専門家で数字に強い。映画は、色々な場面で、こうすれはこうなる、という説明が数字として説明されるのがいい。また、この種の映画の定石だが、画面に大きく、「楊貴妃誕生日まであと何日」と数字が出るのもいい。試行錯誤を繰り返し、やっと宮廷に運搬方法が認められ、予算と人員を確保して、最適の保存方法で都に向かおうとするが……。
誰でも分かるエンターテイメントにして、社会批判もある。それには現代に通じるものがある。役所の他の官僚はまったく事なかれ主義。そもそも皇帝の贅沢のために民が犠牲になっていいのかという問題もある。見ていて胸熱くなるシーンも出て来る。最後まで気が抜けない話なのだ。最後の最後は、「人生塞翁が馬」という諺を思い出させ、人生を感じさせる。
そして、撮影もいい。沢山の馬が疾走するシーンなど黒澤明の晩年よりいい。また、美術が素晴らしく、「画」がゴージャスで厚みがあるのだ。長安の街などほんとうに奥行きを持って描かれている。
何と、主演と脚本・監督は同じ人物!このダーポン(大鵬)監督は日本の藤原正彦(学者・作家)と竹中直人を足して2で割ったような顔の人。コメディ出身の人で、段々と中国映画の期待の人物になっているそうだ。
昨年の夏、中国で公開され、160億円を稼ぎ出している。日本映画は韓国映画に負けているのはとっくに分かっているが、こりゃ、こんな人物が出てきたら中国にも負けるぞえ。
(by 新村豊三)