今だけ、我が家のピアノは
24時間いつ弾いても誰にも迷惑かかりません。
音が出ないからです。
先日、7年ぶりに調律師さんにピアノを見てもらうと、フレンジコードを88個の鍵盤全て交換した方が良いと言われました。
フレンジコードとは、鍵盤を押すと動くハンマーに取り付けられた、紐のようなものです。
我が家のピアノは昭和50年頃に大量生産されたピアノで、開けるとこのような文字が記されています。
〔ヤマハのU3シリーズ 1950~1980年代に製造〕
この年代のピアノは、フレンジコードの質が悪くて、ちょうど今頃、寿命を迎える時期なのだそうです。
でも、この年代のピアノは悪いことばかりではなく、国産の、密度の濃い木で出来ていて、重厚な音が出るそうです。
今のピアノは殆ど、中国などから輸入された軽い木で作られていて、音も軽いのだとか。
調律師さんが、ピアノからハンマーごと取り外して持ち帰り作業して、約1ヶ月後に、新しいフレンジコードのついたハンマーをピアノに再び取り付け、その後に調律してもらうことになりました。
エアピアノなら、もっと自由に弾けば良いのに、何故かいつも弾いている曲を、いつも通りにしか弾く気になりません。
このピアノを弾き始めて50年近くになりますが、こんな感覚で弾くのは初めてです。
(津川聡子 作)
*編集後記* by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟
津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第152話 幽体離脱ピアノ」いかがでしたでしょうか。ピアノにとって魂って……と思わず考え込んでしまいました。ピアノのアイデンティティはやっぱり音? いやいや音を生み出す機構が大事なのだから、音そのものはピアノの本体ではない?
考え始めたところに最後の1コマ、サトコさんの時空を超えたほほえみが効きました。ピアノの魂がどこにあるかは不明ですが、それはきっとサトコさんの記憶を100年後に連れて行ってくれることでしょう!
「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪