アックス第169号(青林工藝舎)に、私の漫画「Waltz Op.69-1 告別」が載りました。

本誌は、昨年十月十二日に亡くなられたアックスの手塚能理子編集長の追悼特集で、私は手塚さんを想いながらこの漫画を描きました。
ショパンが、辛い別れを予感していた恋人に捧げた曲「Waltz Op.69-1 告別」は、曲名から受ける印象とは違って軽快な長調です。追悼対談でみうらじゅんさんと根本敬さんも語られているように、明るく見送られることを手塚さんは望んでいたと思い選曲しました。
私は1995年にガロで入選する二、三年前、学生の頃に初めて描いた漫画をガロ編集部に投稿しました。その作品は、その年の新人賞入選ノミネート(佳作)扱いで、寸評と共にとても小さく表紙画像だけ掲載されました。数年後に正式に入選して、さらに年月が経ちガロではなくアックスに掲載されるようになったある日、手塚さんに耳元で「ばかチンまめ」と囁かれ、私は大変びっくりしました。そして感激の余り、逆にとてもそっけない受け答えしかできませんでした。「ばかチンまめ」は入選ノミネート止まりだった作品名でした。色々と聞きたいことがあったのに、今更ながら残念です。
私の担当編集者は志村さんだったので、手塚さんに直接原稿を見ていただいたことは一度もなかったのですが、自分が漫画家になる前からずっと手塚さんから気にかけてもらっていたような気持ちになりました。もしかしたら、その時の寸評は手塚さんが書いてくださったのかもしれません。「ヘタウマとヘタは違う」という一言でしたが、私には大変ありがたく嬉しいお言葉でした。
もしや今も、手塚さんは私の漫画を見てくださっているかもしれない?私だけでなく、手塚さんのことを大好きなアックス作家陣の作品を、それも、完成する前の、思うように描けなくて誰にも見せずにこっそり捨てた原稿を、手塚さんは読んでくださって、完成へと応援してくださっているかもしれない?
今回のピアノ漫画「Waltz Op.69-1 告別」は、そんな空想から生まれたお話です。
作品に登場する手塚さんのセリフは、「Waltz Op.69-1 告別」に記されている音楽用語です。

con espressione(コン・エスプレッシオーネ) : 表情豊かに

con anima(コン・アニマ) : 魂を込めて

con forza(コン・フォルツァ) : 力強く

dolce(ドルチェ) : 甘くやさしく
ちなみに漫画の最終ページに描かれている雑貨類は、私が実際に長年愛用しているものです。

さて、それでは、つたない演奏ですが動画版ピアノ漫画「Waltz Op.69-1 告別」をどうぞお楽しみください。
ビリケンギャラリーでは3月28日から「手塚能理子をとりまく世界」展が開催されます。青林工藝舎救済オークションもあるそうな!!
アックス第169号と併せて、どうぞよろしくお願いします。
(作 津川聡子 / 写真 てる君)
*編集後記* by ホテル暴風雨オーナー雨こと 斎藤雨梟
津川聡子作「やっとこ!サトコ なう」「第202話 ピアノ漫画「Waltz Op.69 – 1 告別」ネタバレ解説」いかがでしたでしょうか。描くためにかけた長い時間も、破り捨てたあのページさえ、あの人は全部見てくれている。それは別れがくれた贈り物のような空想なのですね。不在に慣れ、生き抜くための明るさが「告別」にもこの漫画にもあって、切ないけれどあたたかい気持ちになります。私は「コン・エスプレッシオーネ」の表情が特に好きです。サトコさんが好きな人、特に女性を描く時に現れる、魔法にも似た輝きが詰まっています。あなたはどうお感じになったでしょうか。
「やっとこ! サトコ なう」へのご感想・作者へのメッセージは、こちらからどしどしお待ちしております。次回もどうぞお楽しみに♪