<赤ワシ探偵シリーズ番外編>山猫夜想曲◆第二十一話「探偵」
〜〜〜 十二年前 〜〜〜 パンの耳で元気を取り戻したジョーは、ジャックを連れて、とある場所へ向かった。 その場所へ行くと、建物の前を念入りに掃除している青年がいた。長身で、全身真っ...
芳納珪の私設レーベル。ワクワクする空想冒険譚をお届けします。
<赤ワシ探偵シリーズ>のスピンオフです。赤ワシ探偵行きつけのバーは「山猫軒」。そこのマスター、鯖猫のジョーが主人公として活躍します。
〜〜〜 十二年前 〜〜〜 パンの耳で元気を取り戻したジョーは、ジャックを連れて、とある場所へ向かった。 その場所へ行くと、建物の前を念入りに掃除している青年がいた。長身で、全身真っ...
ジョーがドアに身を寄せると、ドアの向こうの何者かも同じようにした気配があった。 「『銀のさざ波』という曲を知っているか?」 その声は、最初にジョーをこの家へ連れてきた茶トラ、シマジのものだ...
じゃばっ! 大量の水とともに、硬い床に転がった。 ジョーは喉の奥から水をゲボっと吐き出し、夢中で叫んだ。 「ケースを開けろ! その中へこいつを入れるんだ! 早く!」 目の中に水が流...
ヌシは、恐ろしいスピードで上がってくる。 光沢のない黒い身体をたえず伸び縮みさせ、たくさんの目を青く光らせて。 ひゅん! 何かが耳元をかすめた。 水流に揉まれて、すでに方向感覚はほ...
ジャックが耳をピクリとさせたのと同時に、磁天が上を見た。そして苦い表情でつぶやいた。 「もう始まるのか」 ジョーの耳にもそれは聞こえていた。 さわさわさわ...... さわさわさ...
ジョーは血相を変えて磁天を見た。 「機能を停止って、どういうことだ」 磁天は腕を組み、落ち着き払って答えた。 「オマエが元の身体を離れて農場に来てからすでに三日たっている。今...
ジャックはジョーに向き直り、まっすぐに見つめた。 「なんで帰りたくないか、わかりませんか? ぼくは保管庫なんですよ。そして、ボスのスペアの身体でもあります。ボスが死んだ時にはボスの意識は...
ジャックの言葉を聞いた途端、ジョーの目が釣り上がり、眉間にシワがよった。 この当時はやたらに気が短かったジョーは、ジャックの首根っこをつかみ、ナマコ面の目の穴から顔を覗き込んで凄んだ。 「帰り...
間違いない、この猫人はジャックだ。 そうジョーが確信した瞬間、相手は思いがけない行動に出た。 背中のカゴを下ろすと、中身ごとジョーに向かって投げつけたのだ。 「うわっぷ!」 ...
ジョーは、磁天に作ってもらったニセモノのナマコ面を被った。岩で作ったものだが、水の中で浮力が働いているため、それほど重さを感じなかった。 目と鼻の位置に小さな穴が空いているが、外から見ると表面のゴツ...