版画とちいさなおはなし(31)

「きのこわたり」

リスモドキは草原を見渡した。

すべてのきのこは充分に成長し、表面はしっかりと固まって いる。待ちすぎると、きのこは中から腐り始め、やがてつぶれてしまう。
前に渡ったやつは、それで草原に落ちてしまい、二度と上がってこなかった。

リスモドキは決意した。今が踏み出すときだ。

地平線の先には「シンカ」があるという。 それはどんなものなのか、戻ってきたものがいないのでわからない。
前に進むだけだ。

(版画・服部奈々子/おはなし・芳納珪)

※リスモドキ(ツパイ)は、ヒトと共通の祖先を持つと考えられているそうです。

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