<赤ワシ探偵シリーズ3>ノルアモイ第十九話「災厄の卦」by 芳納珪
私は、占い師のロスコが易を立てるのを見ていた。 数十本の筮竹(ぜいちく)の束を両手でひたいの前に捧げ持ち、祈りを込めて束を分ける。一方は筒に戻し、残った方の本数を数える。その結果に従い、テーブル...
私は、占い師のロスコが易を立てるのを見ていた。 数十本の筮竹(ぜいちく)の束を両手でひたいの前に捧げ持ち、祈りを込めて束を分ける。一方は筒に戻し、残った方の本数を数える。その結果に従い、テーブル...
その領域には、元の世界と同じように十六番街があった。 アーケードの下は、どことなく不安そうな顔や、何かを期待する顔でいっぱいだ。 占いねずみたちが店を構える柱の周りには、客が占い師と会話す...
それは絶望を感じる風景だった。 合わせ鏡の中の世界のように、視界の続く限り、都市の構造体が無限に広がっているのだ。 私はできるだけ落ち着いて、昨夜のロ号歩廊での出来事を思い出そうとした...
竜巻の中に浮かんでいるような心地だった。周りの景色は見えなくなり、体の周りで円筒形の柔らかな壁が高速で回転している。が、不思議なことに風はなく、音もしない。 どれくらい時間が経っただろう...
エムニは私を抱えたまま、片腕の力だけで体を引き上げ、太い配管の上に立った。それから素早く私にトレンチコートを着せ、中折れ帽をかぶせてくれた。二つとも、探偵活動になくてはならないものだ。 ...
「グレコがどうした?」 エムニは瞼を閉じて、受信した映像を見ているようだ。 「『ロスコのボール』に近づこうとしている」 「ロスコのボール? ああ、あの奇妙な球体か」 エ...
エムニは、料理をする間は通常速度に戻ったので、あっという間に私の前にいくつもの皿がならんだ。 冷蔵庫の中のなけなしの食材を使って作ったとは思えない味に、私は舌鼓を打った。 さすがはフェアー...
あっという間に一日が過ぎた。 私は家主が帰って来る前に、蛙人(カエルじん)の家を出た。世話になった礼に、いくばくかのチップを置いて。 都市の隙間に身を潜めて夜になるのを待ち、暗がりをたどってレ...
巨大な馬が、夜空をバックに燃えさかっていた。 揺らめく炎は冷たく青く、どんなに焼かれても馬は永遠に燃え尽きることがない。 グレコが接触テレパシーで伝えてきたイメージと同じ光景が今、現実...
「兵器とは? 大昔にあったという、戦争の道具ですか」 言いながら私は、無意識にいつも万能銃〈ムラマサ〉を装着している左脇をちらりと見た。今そこには何もない。 レディMが私の視線の動きに...