かつてブッダがコーサラ国王の息子であるジェータ太子と著名な篤志家のスダッタ長者に寄進してもらった施設「祇園精舎」で大勢の人や菩薩たちに囲まれて講義をしていた時のことです。
弟子のひとりで、いつもブッダの近くで身の回りの世話をしているアーナンダが質問しました。
アーナンダ「先生、先生のお話はいつも大層ご立派で突っ込みどころのない素晴らしさなのですが、実は前々から先生に聞いてみたいと思っていたことがあるので、この際お尋ねさせてくださいませ。
先生はいつも「人間はみな平等だ!」とおっしゃいますが、私が大衆の姿を見る限り、顔かたちが美しい人がいれば、そうではない人もいます。
力が強い人もいれば、そうではない人もいます。
裕福な人もいれば、そうではない人もいます。
いつも楽しそうにしている人もいれば、そうではない人もいます。
ブイブイいわせている人もいれば、そうではない人もいます。
長生きする人もいれば、そうではない人もいます。
声の高低や話し方だって、みな人それぞれです。
かと思えば、せっかく顔かたちが美しいのに貧乏だったり、力が強いのに性格が最悪だったり、長生きなのに病気がちだったり、善いことをしようと努力したのが裏目に出て罰を受ける人がいるかと思えば、悪いことばかりしているのにたまたまうまくいっている人もいます。
家族が多かったり少なかったり、家族仲が良かったり悪かったり、頭が良かったり悪かったり、努力が報われて財産をなす人がいるかと思えば、まったく努力していないとしか思えないのに財産が増えていく人もいます。
金持ちなのにケチだったり、ものの言い方が優しかったりキツかったり、愛されキャラだったり憎まれキャラだったり、学問が好きだったり嫌いだったり、実に様々な人がいます。
動物たちだってそうです。同じ種類なら全部同じかと思えば全然そんなことはなく、それぞれ色々と違います。
「みんな平等」と思いたい気持ちはヤマヤマなのですが、こうも違ってばかりではなかなか素直に信じにくいというのが正直なところでして・・・
先生、いったいどうして、こんな違いが生まれてしまうのでしょうか?」
―――――つづく
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