別訳【夢中問答集】第八十六問 褒めたり貶したりする芸風とは?
足利直義:確かに「禅宗には抑揚褒貶(よくようほうへん)という芸風があって、仏さまや歴代の師匠であってもボロクソに貶したり、逆に必要以上に持ち...
東西の古典を、きわめて平易な現代語に訳出する試みです。 意によって大幅に構成を改編し、読みやすくするために潤色を施しています。
室町時代のディアロゴスの軌跡が、七百年後の今に甦る!
時の副将軍である足利直義(尊氏の弟)と鎌倉仏教興隆の立役者である夢窓国師の間で交わされた問答の記録を、読みやすい現代語で再構築してご紹介。
著者:文野潤也
足利直義:確かに「禅宗には抑揚褒貶(よくようほうへん)という芸風があって、仏さまや歴代の師匠であってもボロクソに貶したり、逆に必要以上に持ち...
足利直義:そういうことなのであれば、「念仏はアホ向けの方便」などと悪口を言わないで、放っておいてあげるべきなのではないでしょうか? 夢...
足利直義:しかし、実際には大乗の悟りを得ていると評判の立派な人でも念仏修行をしています。 禅師でも念仏に肯定的な意見をお持ちの方がいら...
足利直義:「念仏だって立派な大乗修行だ!」と言っている人もおりますが? 夢窓国師:念仏を唱えるという行為自体には大も小もない。 ...
大乗の修行法に色々な種類があるのは、「大乗仏教には聖人と凡人の区別はない」ということを知ってはいるけれども、その意味がもうひとつよくわかって...
円覚経には、「一切の仏や世界は皆、急に眼を動かした時に現れる空中のチラつきのようなものだ」と書かれておる。 大乗の修行というものは、た...
足利直義:……話を変えさせてください。 「昔のことはいざ知らず、今どきの人にとって大乗仏教の修行は難し過ぎる。さしあたり念仏を唱えてさ...
足利直義:なるほどですね…… 和尚の話を聞いていて思ったのですが、禅宗ではよく教導手法において「理致」「機関」という区別を用いますが、...
本当にもののわかった高徳の師匠にとって、「お釈迦様自身の考え」を説くにあたって一番大切なのは宗派の区別ではなく、受け手のレベルや性格に合った...
足利直義:そういえばお釈迦様の説法には二つの種類があると聞いたことがあります。 ひとつはお釈迦様が相手のレベルに応じた話し方をする「随...