1、
わたしたちはネット上を素っ裸で歩いている。見たサイトも検索したワードもぜんぶ筒抜けだ。10年前買ったものを君は忘れてもアマゾンは覚えている。
2、
棒を持てば振りたくなる。石を持てば投げたくなる。ナイフを持てば切りたくなる。銃を持てば撃ちたくなる。道具はそういうふうにできているし、人間もそういうふうにできている。大事なのはなるべく武器を持たないこと、そもそも作らないことだ。
3、
多数決がそんなに立派だと思うなら、きみが癌になったら国民投票で治療法を決めればいい。医学のイの字も知らない連中に命を預ければいい。バカも一票、天才も一票。それが多数決。
4、
わたしの唯一の健康法は「嫌なことはやらない」だ。それで友情を失うことも収入を失うこともあるが、それらは健康と較べればなんでもない。
5、
『ものぐさトミー』ペーン・デュボア作 松岡享子訳 岩波書店
この予言的傑作は日本では1977年刊行だが、原書は1966年、ちょうど半世紀前に書かれている。作者ペーン・デュボアの先見性には驚くばかりである。
面倒くさいことはすべてコンピュータと連動したマシンがやってくれ、人間は楽しんでさえいればいいという夢が実現しそうな今こそ、わたしたちは、大量の食料に埋もれながら呻くように発されたトミーのひとことを、決して忘れてはいけないのではないだろうか?
◆「夢と悪夢は紙一重」
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