アマゾン出版社 amazon publishing は日本上陸するか?

amazonはすでに出版社を経営している

前回、根本的には出版社とアマゾンは利害が一致すると書いた。どちらも本が売れれば儲かり売れなければ儲からないからだ。現在の日本では一応そういう状況だと言える。

しかしアマゾンが自ら出版社をやるなら話は違う。書店や取次同様、出版社もアマゾンにとって共存共栄を目指す存在ではなく競争相手になる。

知らない方も多いだろうが、アマゾンは本国アメリカでは10年前から出版部門を持っている。Amazon publishing (アマゾン出版)がそれだ。
10年のあいだに着々と拡充され、現在は文芸・コミック・ミステリー・児童書など、それぞれ専門を持つ15のインプリント(出版レーベル)を展開している。

アマゾンにとって自ら出版社をやることには、当然ながら、出版社が上げる分の利益も得られるメリットがある。しかし出版経験のない社員ばかりで出版業を営むのは難しい。新規参入がだいたいそうであるように、経験者を引き抜くことになる。

米出版界VSアマゾン 全面対決の10年

2009年の立ち上げ時、すでにネット書店の巨人であったアマゾンが出版業へ参入することに、アメリカの出版界は激しい警戒心をあらわにした。まあ当然だろう。
本腰を入れはじめた2011年、多くの著名な編集者に引き抜きをかけたがほとんど断られたという。当時出版社内でアマゾンへ行くなどと言えば同僚からどんな目で見られたか想像に難くない。
最大手バーンズ&ノーブルはじめ多くの書店はアマゾン出版の本は扱わない方針を打ち出した。共謀があったかは不明だが、心は一つであったろう。アマゾンに出版のすべてを握られたら自分たちは死ぬしかない、という認識だ。

著者にとってアマゾン出版で本を出すことには大きなメリットと大きなデメリットがある。メリットは世界最大の書店で優先的に宣伝されること。デメリットはアマゾン以外の多くの書店には無視されることだ。書店は恐ろしい競合相手であるアマゾンに手を貸すようなことは絶対したくないのだ。

10年が経過し、アマゾン包囲網の成果だろうか、出版界にアマゾンしか存在しないという悪夢は実現していない。アマゾン出版からのベストセラーも出ているが、出版界を席巻するにはほど遠く、アマゾンも小売りを制覇したようには成功できていない。
ただし出版の電子化がさらに進めば、アマゾンは出版業においてもさらに有利になる。リアル書店に置かれないマイナスが減少するからだ。また、どんな人がどんな本をどのくらい買うかの情報を圧倒的に持っているのはアマゾンで、これは新しい本を作るとき最高のマーケティングデータとなる。
悪夢は“いまのところ”実現していないというほかない。

アマゾンは日本でも出版業に乗り出すか?

さて、重要な話だ。
アマゾンは日本でも出版業に乗り出すか?

わたしはないと考えている。
アマゾンは世界各国で展開しているが、事業の中核部分を現地スタッフに任せたことはない。重要なことはすべて米本社が決定し、各国の法人はそれを遂行する。
大きなものも小さなものも、すべての新機軸はまずアメリカ市場で投入され、成功したものがそのまま欧州や日本に移植される。アマゾンジャパン独自のサービスがないのはご存じの通りだ。
この米本社至上主義は中国での惨敗の原因と言われているが(アマゾンが無敵どころかボコボコにされて泣きながら逃げ出したという話)、他国では成功している。

出版では本の中身こそ中核だが、これは本国からコントロールしにくい領域だ。現地、日本なら日本の編集者を信じて任せるしかない。過去の例を見る限りアマゾンはそういうことのできる会社ではない。アマゾンが日本で日本語の書籍を出版しはじめることはないだろう。

ところで、アマゾンが出版流通から出版社の取り分を排除する方策はもう一つある。

セルフ出版だ。次回はこれについて書く。

ちなみにセルフ出版については当ホテルの風木一人オーナーも連続記事を書いている。(KDP電子書籍の印税(ロイヤリティ)はなぜ70%なのか?

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