時計塔と王様(前編)

王様が、とても大きな大きな時計塔を建てました。
時計塔は国のどこからも、その姿が見え、正確な時を知ることができたので、人々は喜びました。
他の国々でも「あの国は、とても正確な時を刻む ! 」と評判になりました。
正確な時間のおかげで、国は大いに発展しました。
しかし、時計塔が正確な時を刻むには、大量の時間が必要でした。
そこで王様は国民から『時間税』を徴収する事にしました。

国民から徴収した時間が時計塔に運び込まれ、そのおかげで、時計塔はより正確な時を刻むようになりました。
―― でも、巨大な時計を動かすには、いくら時間があっても足りません。
初め王様は、国民から8パーセントの『時間税』を徴収していましたが、それでは足りなくなったので時間税を10%に引き上げました。

時間税が上がってきたので、国民が持っている時間が次第に少なくなってきました。
元々は時間がとても豊富な国柄だったのですが、「時間がない、時間がない」というのが人々の口癖になってきました。
高い利子をつけて時間を貸す、『高利時間貸し』という悪質な業者も現れ、まずます国から時間のゆとりが無くなってきました。国民の間での、時間の格差も次第に露わになってきました。
使い切れないほどのに時間を持っている人もいましたが、ほとんどの人々には僅かな時間しか残されていませんでした。

…… もう国民から、これ以上時間を徴収する事ができなくなった王様は困りました。
というのは、時計塔はその頃には建て替えが進み、より複雑になってしまったので、膨大な時間を必要としていたからです。
時計塔には腕のいい時計職人が何百人も働いていたので、それらの働き手に渡す時間も必要でした。
時計塔の時間が狂ってしまうと、国は滅びてしまいます。

考えに考え抜いた王様は、他の国々から時間を輸入する事にしました。
他の国々では、時間はとても安く売られていたのです。
他国から輸入した安い時間のおかげで時計塔は、なんとかして時を刻む事ができました。

―― しかし、次第に問題が生じてきました。
大量に時間を輸出した為、それらの国々の時間が枯渇して、いわゆる『時間の砂漠化』が進行してしまったのです。
「もうこれ以上は我らの時間を売る事はできん ! 自分の時間ぐらいは、自分でなんとかしてくれ ! 」
次第にそれらの国々は、時間を輸出する事を止めました。

困り果てた王様は国中の『時間学者』を集め、会議を開きました。
会議では、いかにして時計塔を動かす『時間』を作り出すかが話し合われました。
会議は数時間も続きましたが、なかなか解決策が見出せません。
―― ある高名な時間学者が手をあげ、言いました。

「…… 陛下、私はこのほど、時間にはある種の質量があり、同じ時間でも、それぞれ重さが違うという事を発見しました。…… つまり同じ時間でも『軽い時間』と『重い時間』があるのです。私が思うに、新たな時間を創り出すには、ここに重大なカギがあります。もし私に予算をいただければ、この研究を続ける事ができます」

学者の言う事を信用した王様は、膨大な予算をその学者に渡し、研究を続けさせました。
時間学者は国中から時間のサンプルを集め、研究を続けました。
―― そしてその結果、彼は驚くべき発見をしました。
『重い時間』と『重い時間』をすごい速度でぶつけると、その何倍もの時間が生まれる事が判明したのです !

あまりにも危険な事だったので、他の国々はその研究の続行に反対しました。
時間を弄ぶような行為には、どのような結果が待ち受けているかは、誰にも分からなかったのです。
―― しかし王様と時間学者は、その未知の研究を続けました。
そして、ある日の事、時間学者は『時間加速装置』を使い、重い質量同士の時間を衝突させて、その何百倍もの時間を生じさせる事に成功しました。

――――つづく

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