掃除の神様(後編)

お母さんは、ユー君とお父さんを病院に残し、家に帰ってきました。
辺りをキョロキョロと見渡しながら、お母さんは言いました。

「掃除の神様 ! どこ ? 」

すると、掃除の神様がパッと音も立てずに現れました。

「なんじゃね、なんじゃね。ワシは忙しいのじゃよ。用があるなら早く言いなされ」

「あなた ! 消えたゴミはどこへやったの ? 私の息子と主人の具合が悪くなったのよ ! ……もしかしたら、消えたゴミは二人の体の中へ ? 」

すごい剣幕で詰め寄るお母さんにタジタジになりながら、掃除の神様は頭をポリポリと掻きました。
「あー、その事かね。そうじゃよ。だって他にゴミを捨てる所がなかったからね。悪かった、悪かった」
掃除の神様は両手を広げ、何かブツブツと呪文を唱えました。

「……さあ、もうこれで大丈夫じゃ。二人の体の中からゴミは消えた。存分に魔法のホウキを使いなさるとよい」

そう言いながら、掃除の神様は姿を消しました。
しばらくすると、何事もなかったかのようにユー君とお父さんが戻ってきました。
試しにお母さんは、魔法のホウキで家のゴミを掃いて消してみました。
ーーでもユー君もお父さんも平気な顔をしています。
「よかったわ ! ゴミは完全に消えるようになったのね ! 」

喜んだお母さんは、再び家をきれいにしてまわりました。
家がきれいになると、なんだか家の外が気になってきました。
外にもたくさんゴミが落ちていたのです。

お母さんは魔法のホウキを手に、家のまわりを掃除しました。
「すごいわ!こんなに綺麗になって、なんて気持ちがいいのでしょう。家のまわりだけを綺麗にするのが、なんだかもったいないわね……」
そこでお母さんは、今度は町に出て掃除をしてみました。
お母さんが魔法のホウキで掃くと、町に落ちていたゴミが次々に消えていきます。
お母さんは町をきれいにするのが日課になりました。
おかげで、ゴミひとつ落ちていない、きれいな町になり皆喜んだという事です。

ーーしかし、ある日のこと。
お母さんがテレビを見ていると、ニュースをやっていました。
画面には南米のジャングルが映っています。ニュースのレポーターが実況中継をしていました。

「ーーこの不思議な現象はここ数日続いています。何もない空の上から、どこからともなくゴミが降ってくるのです!謎の現象には科学者も皆頭を抱えており、このままでは熱帯雨林はゴミで溢れてしまうと、警告をしています」

お母さんはリモコンでテレビを消して、顔を真っ赤にしながら掃除の神様を呼びました。
掃除の神様が現れると、お母さんは言いました。
「何よあれは ! 消えたゴミは全部地球の反対側に行っていたのね ! 」

「あのなあ。ゴミを完全に消し去るなんて、そんな都合のいい事、あるハズないじゃろう。いくら神様でも、モノを完全に消し去るなんてムリじゃよ。……どこかがきれいになると、代わりに違う場所が汚れるのはこの世の理なのじゃ」
「もういいわよ ! ホウキを返すから、元どおりにしてちょうだい ! このままでは、国際問題になってしまうわ ! 」

お母さんが魔法のホウキを手渡すと、掃除の神様は不満げな表情を浮かべながら、姿を消しました。
掃除の神様が消えると、ドサッと大きな音を立て家にゴミが戻ってきました。
町にもゴミが戻ってきました。
ユー君とお父さんが家に帰ってくると、家の中が元どおりに散らかっていたので驚きました。
お母さんは掃除をする気力も無くして、寝込んでしまっています。

ユー君とお父さんは、お母さんが心配になり言いました。
「……いつも部屋や家の中を散らかして、ごめんなさい。これからはボク達もちゃんと掃除をするから」

ーーそれからは、ユー君もお父さんも家の掃除をするようになりました。
魔法のホウキほどには綺麗にはなりませんけど、二人が掃除をするようになったので、これで良しとしましょう、とお母さんは思いました。
相変わらず、ユー君もお父さんも掃除や片付けが上手とは言えませんが。

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