ぐっちーさんと話そう<33> 狂うのは犬だけじゃない〜狂うほど好きでも噛んじゃダメ

正攻法 illustration by Ukyo SAITO ©斎藤雨梟

Twitterでお話しました

こんにちは。今週もよろしくお願いします!

みなさまこんにちは。
「妄想生き物紀行」編集担当、ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。

今回も、ポッドキャスター・ぐっちーさんのエッセイ「狂犬病〜海外で動物とふれあうには覚悟と準備が必要です」を読んで、ぐっちーさんにあれこれお聞きしたもようを、お伝えいたします。

先週のぐっちーさんのエッセイをお読みいただくとより楽しめる内容です。

ぐっちーさん、よろしくお願いします

母の怖れと怒り:本当に狂犬病の恐れはないか

今回は、ふわゆさんが貴重な経験談を寄せてくださいました。

な、なんと!! ノラ子犬ではワクチンは接種していないでしょうし、確かにちょっと怖いです。

「狂犬病はもうないから大丈夫」と言われても、全部の哺乳類調べたわけじゃあるまいし本当に? と思ってしまいますよね。狂犬病が猛威を振るっていた頃をよく覚えていればなおさらです。今でいうと「コロナはもうない」と急に言われるような感じでしょうか。うーん、でも何はともあれ本当に良かったです。

野犬狩りに野犬処理場……言葉を聞くだに恐ろしいですが、狂犬病の脅威がすさまじかったことが伝わってきます。

美味しいゴハンをもらっている隙に注射とは、獣医さんもそんな技を使うのですね。注射嫌いな子(大抵は嫌いだと思いますが)や力の強い子のワクチンはけっこう大変と聞きます。飼い主さんも獣医さんもそれぞれ何か「技」を持っていそうでそれも聞いてみたい。

ふわゆさん、どうもありがとうございます!

なんで犬だけ注射しなきゃいけないんだワン?

続いて、シャルル大熊さんからコメントをいただきました。

それ、不思議ですよね。ウイルスは一般に数少ない特定の種に感染するというイメージがあります。狂犬病は哺乳類全般に感染するものの、犬が感染源になりやすい特別な理由があるということ?

日本も狂犬病の脅威にさらされていた時代ならば、猫やネズミ、家畜の馬、牛、豚、山にいる鹿や猪や狼なども相当警戒されていておかしくなかったはずですが……?

日本で最後に狂犬病になった猫は、いったいどこから感染してしまったんでしょう。もう少し遅く生まれていれば。

今、野犬は滅多に目にすることがありません。ノラ猫はいますが、確かに臆病でそうそう寄って来ないし、寄ってくるのは人懐こい、噛んだりしない猫です。噛むくらいなら逃げますし、逃げないように捕まえようとしない限り噛まないですよね。

昔はそれだけ「その辺にいる野犬に噛まれる」ということが頻繁にあったのでしょう。

シャルル大熊さん、ありがとうございます!

猫もワクチンを打っておくと出入国が簡単になりますニャ

日本には狂犬病に感染した哺乳類は本当に一個体たりともいないのだろうか? 存在を証明するのは簡単だが無の証明は困難であるなあ〜などと考えているうちに、こんなエピソードを思い出しました。

台所で一仕事するときにおぶっていた赤ちゃんをちょっと下ろして寝かせた隙にネズミに全身を噛まれて赤ちゃんが死んでしまうということが「よくあった」から「怖くて目が離せなかった」と祖母が言っていて「ひえ〜!!!」と恐ろしかったのを覚えています。後で思うに何でも大げさに言いがちな人ではありましたが、ただならぬインパクトでした。

ですがよく考えると、狂犬病ウイルスの有無にかかわらず「赤子をかじって殺しかねない」時点でネズミ、相当に嫌われていたでしょう。ネズミ捕りとか猫いらずでやっつけたり、猫を飼ったりして戦ったけれど、それでもネズミはいまだに人間の居住域を脅かしているわけで、じゃあネズミの狂犬病は? ネズミ取ろうとした猫がいわゆる「窮鼠猫を噛む」の反撃に会ったら猫が感染するではないか!? う〜む。

そこへトリフィドさんからコメントをいただきました。

猫も普通に狂犬病ワクチンしてもらえるの? 全然知りませんでした。愛犬家の皆さんには季節の風物詩並みに身近であろう狂犬病ワクチンですが、案外こういうの、(私だけでなく)知られていない気がします。

そうなんです。

8月に逝去したうちの宇宙一の美女(注:猫)など、晩年は腎臓病でしたが、まったくの健康体であった時でも、検疫所に6ヶ月も留め置かれたら寂しくて死んじゃいかねない子でした。海外へ猫を連れて行きたい人や、海外で出会った猫を連れて帰りたい人は、かなりの犠牲を強いられるもんだよなあ、と前から感じていたのです。

おお! 全世界の猫好きへのすばらしい情報をありがとうございます。

それなりに事前準備をすれば、猫とともに海を渡るハードルは格段に低くなるのですね。

※ 入力間違いがあり、正しくはオーストラリア(×オーストリア ○オーストラリア)だとのことです。

それにしてもすごいマイクロチップ重視。

ワクチン接種証明書があっても、それが本当に今連れているこの個体に間違いないと証明するには、必要なのでしょう。そう考えたら、人間の場合、見た目が本当にそっくりな人(双子とか)が入れ替わって出入国を試みたとしても「目視」以上の厳しさで証明を求められることはないということですね。

狂犬病ウイルス:太く短い武闘派っぽいのに意外と長生きの不思議

それにしても、狂犬病ってかなり特別なタイプのウイルスではないでしょうか。派手なのに隠れるの上手というか何と言うか。

そうそう、そういうことが言いたかったんです! さすがです。

ウイルスは単独で遺伝子を残せず宿主あってこそ。宿主を殺しちゃおしまい。だからこそ変異して弱毒化しない限りなかなか生き残るのが難しいというのが定説かと思うのですが。

免疫の力をかいくぐるところも、ワクチンの有効性の高さもすごいですよね。そこにいるのに目に入らない、でも一度気づいてしまえば一目瞭然というような、よほど哺乳類の免疫の「うまい盲点」をついているんでしょうか。

ああ、なるほど。いずれ宿主を殺してしまうとしても、その前に他生物に噛み付くなどして新しい宿主に移れればいいですからね。

海外との行き来も物の流れも加速的に増えています。昨年は、国連の専門家たちが、世界に広がる感染症が頻繁に発生する原因は「他の動物との関係が変化したから」であり、中でも大きなものは「動物性たんぱく質への依存が深まっている」「持続不可能な畜産業に頼っている(野生生物を脅かし、搾取し生態系を破壊している)」などだと警告したというニュースも印象的でした。

参考リンク:動物由来の感染症、今後も増え続ける恐れ=国連報告書(BBCニュース)

少なくとも通り一遍の検索頼みの調べ方では、狂犬病の自然宿主がいるのかどうかがまったくわからなかったのです。しかしわかっていればもう少し注意を喚起されていそうだし、やっぱりわからないのでしょうか。

確かにエボラも「コウモリらしい」「やっぱり違うらしい」などと二転三転してまだ不明な点が多いらしいですし、ウイルスの振る舞いというのは、そう簡単にはわからないようです。エボラ出血熱も感染は一部地域に抑えられてはいるものの恐ろしい病気です。早く治療方法が確立することを願ってやみませんが、必死で日夜研究している人がいるに違いないのにいまだにはっきりと有用な方法がないのですから、ウイルス相手の戦いは本当に厳しいものです。

野生生物とむやみに触れ合うべきでないとは認識していましたが、こと狂犬病に関しては犬だけに注意すればいいのかと思っていましたからね。宿主は何でもいいのか、狂犬病ウイルス! あとコウモリ、なんでそんなにウイルスに好かれるの? 哺乳類なのに飛べることと何か関係あるの? あれこれ疑問は尽きません。

トリフィドさん、どうもありがとうございます!

小指は噛まないように各自十分ご注意ください

ウイルスの脅威にさらされまくっている時節柄もあり、目に見えないウイルスの暗躍を想像すると怖くなってきます。

受けておけば安心ですからね!

そうなんです、記事の公開期間を設定せずに狂犬病について検索すると、ここ20年ほどの過去のニュースがぽつ、ぽつ、と出てきました。日本でも全世界でも人間界では「大脅威」ではなくなりつつある狂犬病ですが、哺乳類界全体ではやはり周期的に広がったり、弱まったりを繰り返しているのでしょうか。

調べてみると、暴露前接種(受傷前に念のため接種しておくワクチン)でも間をあけて3回の接種が必要なようですね。この場合保険適用外で費用もわりと高額なので、推奨されていない地域だから別にいいか、となりがちなのかもしれません。

ところで。

「狂犬病はヒトからヒトへは感染しない」と、厚生労働省のページ他いろいろなところに書いてあるのですが、それは発症者がヒトとしてごく常識的な行動しかしなかった場合に限るのか? エクストリームな行動に出た場合(例:他の人間に噛みつきまくる)でも感染しないのか? という点にモヤッとしていたところ、出典や根拠は不明ですがWikipedia に気になる記述を発見、それは……

海を渡られる際は十分お気をつけください。

最後に、今回のページトップの絵ですが、もしも言葉が話せたら……という妄想の診察室です。そりゃ嫌だよね注射。

インフォームドコンセント

では今回はこれにて!

次回のエッセイのテーマは「リストロサウルス」です。リストロサウルス? なにそれ!? と思いましたか。私も初めて聞いた時はそうでしたが、妄想旅ラジオ第34回「リストロサウルス」を聴くと、どんな生き物か知ることができます。青森で行われる魅惑のイベントや昔懐かしい食べ物についても知ることができます。予習がてらぜひ聴いてみてください。エッセイはどんなお話になるのか、どうぞお楽しみに。

そしてエッセイを読んだ後はまた、 Twitter でもお会いしましょう!

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