ブンチョウ〜愛知の鳥と言えばブンチョウ? いえいえ手羽先です(本当はコノハズク)

ブンチョウはスズメ目カエデチョウ科キンパラ属に分類される鳥類である。原産はインドネシアのジャワ島やバリ島であるが、南国生まれの彼らは大航海時代にやって来た人類によって世界各地に移動させられ、ペットとしても大人気である。日本では江戸時代初期から飼育されていたようで、中でも愛知県弥富市は「文鳥の町」として有名である。

ブンチョウは雛の時から育てていると、人間に慣れて手の上に乗る、いわゆる「手乗り文鳥」にすることも可能である。ペットとしても人気があるブンチョウは今でも生産されているが、その数は減少している。愛知県のブンチョウ生産者は昭和50年頃には200戸あまりだったものの、令和2年には3戸にまで減少している。「文鳥の町」は危機的状況にあるのかもしれない。

愛知県弥富市が「文鳥の町」として全国的に有名なのはその生産だけではない。ブンチョウには主にナミブンチョウ、シロブンチョウ、サクラブンチョウなどがいる。ナミブンチョウは頭が黒く、頬のあたりが白い。そしてくちばしが赤い。体は白く、羽がグレーと、南国生まれの鳥らしく全体がカラフルである。一方シロブンチョウはくちばしを除く全身が白く、くちばしの赤がひときわ目立ち、より印象的なカラーリングになっている。

このシロブンチョウはナミブンチョウを飼育していた弥富市の生産者から突然変異で生まれた日本特有のブンチョウなのである。弥富市はシロブンチョウ発祥の地としても有名である。多くの場合、白い生物が生まれると色素を生成する遺伝子が損失したいわゆるアルビノを思い浮かべるかもしれないが、シロブンチョウは目が黒く、体毛のみが白いことからアルビノではない。我が家もネコがいなければ飼ってみたいペットである。

さて、弥富市がある愛知県の鳥と言えば手羽先である。手羽先はニワトリの羽の部分を唐揚げにして甘辛いたれを付けた料理である。以前名古屋に遊びに行った時に、有名な居酒屋で食べたことがあるのだが、その食べ方にも作法がある。詳しくは現地で確認して欲しい。その手羽先を眺めると羽の先が二手に分かれているのが分かるだろう。肉の詰まった太い方と小さな骨がある小さい方である。

手羽先の小さな突起は鳥類に共通な小翼羽(しょうよくう)と呼ばれる羽が生えている部分である。この小翼羽についてはこれまであまり注目されていなかったのだが、2014年その機能について明らかにした中学生がいた。小翼羽について様々な鳥類で比較し、食性などで分類して58ページにも及ぶ論文によりその機能を比較検討したのである。

参考資料:スーパー中学生による論文(編注:PDFファイルです。後述される事情により著者名をここには挙げません)

詳細については上記リンクに譲るとして、小翼羽の大きさ、形状などのサンプルをたくさん集めて比較し、そこから得られた情報から仮説を立て、実験を行い立証していく。指導する先生がいたことは想像に難くないが、中学生とは思えないその行動力には普段帽子をかぶらない私も脱帽である。

彼は高校に入学しても研究を続け、2016年度の日本農芸化学会という学会で発表し、その論文が学会誌にも掲載されている。2017年1月にリリースされた妄想旅ラジオ第49回でこの高校生について紹介した時は、彼はまだ受験生だったはずである。実はその後が気になり再度調べてみた。

2017年当時、私がポッドキャストで彼について言及していることを彼は知らないはずである。更に5年後になってその後について調べられていることについても知らないはずである。このことは、私のことについて知らないところで誰かに調べられている可能性も十分考えられる訳だが、知らないのだから感情を動かされることもないので知らないままでいたいものである。つまり、彼について調べたことを彼に知られないように、固有名詞を避けて紹介したい。

彼は高校を卒業後、国立大学に入学し、鳥類の研究を続けているようである。現在は大学院に進み本格的な研究活動に邁進しているようで、今後10年もしたら著名な鳥類学者としてメディアに登場するかもしれない。よって私は彼のストーカーを続けることにする。

(by ぐっちー)

<編集後記>

※このエッセイ「妄想生き物紀行」は、ポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ第49回 ブンチョウ」と関連した内容でお送りしています。ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。「妄想旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組です、詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。

ぐっちー作「妄想生き物紀行」第49回「ブンチョウ〜愛知の鳥と言えばブンチョウ? いえいえ手羽先です(本当はコノハズク)」いかがでしたでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当・ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。

こんにちは!

へぇ〜、愛知県の鳥、コノハズクなんだ! とボケたところで、すごいですよね、スーパー中学生。論文を読んでみましたが、問いの立て方実験の仕方などはとても中学生の書いたものとは思えません。図表も非常に美しいです。それでいて、専門家でないとわからない用語などは登場せず(したとしても解説があり)、アマチュアの心を忘れないプロ、みたいな親切設計。みなさまも、ちらりと見るだけでも、ぜひ。今回のタイトルを妄想旅ラジオ風につけるなら「ぐっちー、中学生をストーキングする」で決定!

文鳥、魅力的な鳥です。小さくて丸いフォルム、上品なくちばしの色、美しい黒い瞳。文鳥ラバーが多いのも納得です。創作の源にもなっていることが、「文鳥作品」からも伺えます。

Twiterでぐっちーさんと話そう企画

さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、Twitterでお話したいと思います。文鳥について、小翼羽について、手羽先について、などなど何でもお話しましょう。参加方法はTwitterに書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、質問してみたい人はもちろんただお話してみたい人も、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています!

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