キジハタはスズキ目ハタ科マハタ属に分類される高級魚である。生息域は津軽海峡、青森県〜九州南岸の日本海、東シナ海沿岸、瀬戸内海、相模湾〜九州南岸の太平洋沿岸。さらに朝鮮半島南岸、済州島、台湾南部、福建省〜トンキン湾の中国沿岸の水深5-25mの岩礁域に生息する。標準和名であるキジハタよりも関西での「あこう」の方が有名で、大阪などでは夏の「あこう」の薄造りは冬のフグに対するものとなっていて「冬のフグ、夏のあこう」などともいわれているらしい。ちなみに私はまだ食べたことがない。
ところで、世界の魚類は何種類いるだろうか。実は25,000種類以上いるといわれている。そのうち、スズキ目の魚類は10,000種以上といわれ、魚類の4割ほどをスズキ目が占める。日本人の中で鈴木さんは人口の1.5%にあたる180万人いるが、魚類のスズキ目には遠く及ばない。ちなみに日本人で最も多い名字は佐藤さん、次いで鈴木さん、そして3番目に多いのが高橋さんである。
一方、世界で最も多い名字は「李(リ・イ)」らしい。中国人の約7.2%、韓国人の14.8%を占め、おおよそ1億人が李さんなのである。それでもスズキ目には遠く及ばない。ただし、ベトナムでは「阮(グエン)」さんが人口の約38%を占めてスズキ目に迫る勢いである。40人学級で出席をとったら16人連続でグエンさんになる計算だ。
脱線ついでに世界で最も多いフルネームを考えてみた。中国の子供の名前ランキングを見ると2021年度は「沐宸(ムーチェン)」くんだったそうだ。この年に戸籍登録された新生児は887万人で、男児は468万人だった。このうち「沐宸(ムーチェン)」くんは22,958人とされ、確率的に「李沐宸(リ・ムーチン)」くんは1,653人いるはずである。一方、中国人全体でみてみると、「偉(ウェイ)」さんが323万人いるそうで、「李偉(リ・ウェイ)」さんは計算上23万人いることになる。
ここで、中国人の姓名ランキングを調べていると答えが出ていた。このサイトによると、中国人で最も多い姓名の組み合わせは「張偉(ヂャン・ウェイ)」さんで、29万人いるそうである。ちなみに「李偉(リ・ウェイ)」さんは27万人となっており、先ほどの23万人とほぼ合っている計算だ。自分でもびっくりしている。つまり、14億人のうち27万人なので、5千人に1人は「李偉(リ・ウェイ)」さんという計算になる。
2019年の中国人の訪日客数は959万人であった。一日あたりに換算すると2.6万人である。このうち半数が成田空港から入国したと考えると、成田空港の到着ロビーで丸一日「李偉」というカードを掲げていたら少なくとも2名は反応するはずである。中国人訪日客が戻ったら一度やってみることをおすすめする。
さて、魚といえば妄想旅ラジオでパーソナリティをしていたポチ子さんも集めている耳石である。耳石は脳の下あたりにあり、神経に繋がった細い毛の上に乗っていて、音や振動、体の向きを感知している。キジハタの耳石と体長には相関関係があり、耳石の長さの約28倍が体長と推定され、30㎝のキジハタの耳石の大きさは約1㎝である。
耳石の内部には年輪と同じように年に1本のスジができ、さらに細かく見ると原則1日1本の細かいスジができる。サンゴのような硬い組織を作る場合も1日1本のスジを作ることがあり、JOHN W. WELLS氏がNature誌(1963年)に発表した論文では、サンゴの化石に縞模様を見つけ、更にその間に385から410本の微細な縞模様があることを発見した。この微細な縞模様は日周輪ではないかと考えて、4億年前の地球の公転周期は約400日ではないかと推定したのである。
では、この耳石について実際どのような使われ方をしているかみてみよう。耳石日周輪研究は魚類の初期生活史の解明に有効で、つまり、どこで生まれて、どのような成長をしたのかがわかるのである。一番有名なのがウナギの産卵場を突き止めた研究で、ウナギの稚魚を捕まえて、この耳石日周輪を見ることで孵化した日が判明する。すると、海流などを計算して孵化した場所を推定することができ、見事その推定通りの場所でウナギの卵を採取することができて産卵場が特定されたのである。
耳石を研究することで、その魚がどのように生きてきたか判明する。魚の多くがスズキ目だが、耳石はその魚固有の成長記録を封印した貴重な宝石とも言える。自分で集めるのは大変なので、ポチ子さんの耳石集めの進捗状況を確認するだけでも面白いのではないだろうか。
(by ぐっちー)
※このエッセイ「妄想生き物紀行」第84回はポッドキャスト番組「妄想旅ラジオ」第84回「キジハタ」と関連した内容です。「妄想旅ラジオ」は、ぐっちーさん、ポチ子さん、たまさんの3名のパーソナリティーが毎回のテーマに沿って「生き物」「食べ物」「旅」について話す楽しいラジオ番組(ポッドキャスト)です。そちらもお聴きになると一層お楽しみいただけますのでぜひどうぞ! ポッドキャストはインターネットのラジオ番組で、PCでもスマホでも無料でお聴きいただけます。詳しい聴き方などは「妄想旅ラジオ」のブログを。
ぐっちー作「妄想生き物紀行」第84回「キジハタ〜ポチ子さん、耳石集め頑張ってください。応援しています。」いかがでしたでしょうか。今回もお読みいただきありがとうございます、編集担当・ホテル暴風雨オーナー雨こと斎藤雨梟です。
こんにちは!
海の魚の王者はスズキ目。陸の王者は植物。『妄想生き物紀行』読んでると勉強になるなあ〜
と、宣伝はさておき、耳石からその魚の日齢がわかるだけでなく、生活史、さらには地球の公転周期までわかってしまうとは驚きです。
そして近頃は「聴く日記文学」(by トリフィドさん)こと「コトブキ旅日記」というポッドキャストもされているポチ子さんのブログ・耳石コレクション は大変オススメなので改めてご紹介します。魚を入手した経緯(釣った、魚屋さんやスーパーで買った、など)、調理方法、そして耳石が毎回紹介されていて、それだけでも有機的なデータベースといった面白さがあります。ポチ子さんの独特のコレクター眼がまたいいのです。
Twiter改めX でぐっちーさんと話そう企画
ポチ子さんブログのお話になってしまいましたが、さて今回も、ぐっちーさんとみなさんと、X(旧Twitter)でお話したいと思います。キジハタについて、耳石について、数の多い苗字について、などなどなんでもお話しましょう。参加方法はX(旧Twitter)に書き込むだけ、なので初めての方も、ラジオお聴きのみなさまも、質問してみたい人はもちろんただお話してみたい人も、エッセイを読んでの感想、ぐっちーさんへの質問やツッコミなど、ぜひお気軽に。お待ちしています。
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— 斎藤雨梟 (@ukyo_an) July 7, 2020
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